2009/5/16 皐月十六日 その1






ホッキョクグマの親子in円山動物園。
今年生まれたばかりの彼らは大人気で、多くの人の視線を集めていた。


5月16日は北海学園大学の創立記念日。
前にも同じような書き出しで日記を書き始めたような気がするが
年が変わろうと創立記念日が変わるわけもないのだから仕方がない。

いや、仕方なくもないか。
大学の創立記念日は変わらずとも、私が大学に関わらない立場になっていたら
わざわざここで、大学の創立記念日について触れる必要もないわけだ。
しかし私は本日、大学入学後5回目の創立記念日を迎えてしまったのである。


私の所属する写真部では、この日の講義が休みになることに合わせて、新入生向けの写真撮影会を開催している。
新しく入ってきた人たちに、カメラやフィルムなどの使い方に慣れてもらうためのイベントの一環なのだ。
って、これも以前の日記で書いたな。



今年は舞台を円山界隈へと移して行われるが、今年の撮影会においては昨年までとは大きく異なる点がある。
私が入学してからの4回、そしてそれ以前もやっていた焼肉パーティーをやらなくなった事だ。
つまり、昨年での「撮影会という名前の焼肉親睦会」から、本当に写真を撮るイベントへと変貌を遂げたのである。

私のような、普段からいろいろ撮りまくっている撮影者からしてみれば、
焼肉をやっていようが、何をやっていようが、そこに人がいる限り撮るものはあると言えるのだが、
これから写真をやっていこうとする新入生にとっては、
焼肉パーティーの最中を撮れと言うのも難しいと思うので、この変革は良い事だと思う。

一方で私にとっては、前も言ったとおり、今年の新入生と言うのは「本来なら会えなかった人たち」だ。
私が昨年で卒業し、どこかの企業で働いていたのならば、今年私が大学に残っている事はあり得なかったわけだから
今年の新入生達と、一緒に撮影するどころか、顔を合わせる事さえなかったはず。
だから今回の撮影会において私は、自分が何かを撮るのではなく、
彼らに何かを与える事ができればいいなと考えて行動することにした。


お昼過ぎの部室にて、4名ほどの新入生がこちらに集合中。
私は彼らの様子を見たのち、一足先に車で円山へ。(実はただ機材輸送を担当しているだけ)

だがしかし、今日の円山付近は、円山球場で高校野球が行われ、陸上競技場では競技会が行われ、
さらには休日の円山動物園には、家族連れが殺到しており、付近の道路は大渋滞。
駐車場を見つけるのも一苦労であり、私のせいで撮影会の開始が遅れた。反省。


到着次第、新入生にカメラ機材とフィルムを配って説明開始。
ところで今日の撮影会は、コンパクトデジカメの使用者が非常に増えている。
コンパクトデジカメも悪くはないが、フィルムを現像したり、暗室作業したりすると言う行程がないので
それを通じて他の人と仲良くなったり、技術を教えてもらったりという機会が希薄になる事が懸念される。
ただ今年から部室にパソコンを導入したので、デジタルの加工もできるようにはなっている。


新入生にカメラの使い方などについて説明するgcfnさん。
女性で写真にそれなりに詳しい人って、我が部には彼女くらいしかいないんだよな。
一方で今の2年生や1年生は女の子の方が多い。さて、この先どうなる事やら。


チューリップです。それ以上でもそれ以下でもない。
で、なぜこの写真を撮ったかと言うと、新入生に
「例えば花をきれいに撮りたければどうやって撮ればいいんですか?」
と尋ねられたからだ。

とはいえ花をきれいに撮る方法なんていっぱい考えられる。
構図や角度などについては、各人がそれぞれ工夫すべきことだと思うので、
私は一例として、被写界深度(ピントが合う範囲)を浅くし、背景をぼかす撮り方を彼に紹介した。
手元にデジタル一眼レフがあると、すぐに撮影して作例を見せられるので、撮影技術を教えやすい。
これは銀塩ではできない、デジタルカメラだからこその利点ではないかと思う。



「では四時に北海道神宮に集合してください。それまでは自由行動です」

部長の号令と共に、新入生達は一斉に円山界隈へと散ってい・・・・・・くわけもなかった。
いきなり放り出されて、何か適当に撮ってこいと言われてもなかなか難しいものだよ。
それでも時間の経過とともに、ある者は一人で、またある者はグループで、公園の奥の方へと展開していったようだ。



あれ?蟹沢さんによっけ君にnoct-氏に・・・・・・何でいつものグループで固まっているんですか!
実力がある人はやっぱり教える立場に回るべきでしょう!
・・・・・・何?別にそんな事俺らには関係ない?はいはい、わかりましたよ。
まあいい、私は予定通り新入生のグループについていって、写真を指導する立場に専念することにするよ。



新入生と適当に話しつつ、裏参道を歩く。彼らは円山動物園へと入る模様。


とりあえずこちらには6名の新入生がいるけど、確か今回参加の新入生はあと8人いるはず。
他の8人については、誰かがちゃんとカバーしてくれていることを祈ろう。



さて、動物園に入って撮るものと言えば、やはり動物だろう。
撮りたければ、遊びに来ている幼児を撮ってもいいが、如何せんそれは色々な意味でハイレベルだ。


まず最初に我々が向かった先は、レッサーパンダである。

木を渡り歩く姿がとってもキュートである。


今回は自分が動物を上手く撮る事よりも、新入生に写真の楽しさや面白さといったものを感じてもらう事が主眼なので
私自身はあまり写真を撮らず、新入生が写真を撮る様子を温かく見守っていることにする。
とはいえ場合によっては、新入生に見せるお手本となる作例くらい撮れないと困るので、
結果として短時間のうちにそれなりの写真を撮れる技術は必要になる。





特にカメラの特性を知っているか知らないかで差が出るのが、金網越しの撮影だ。

つまりこんな感じ。手前には金網があるのだが、ほとんどわからないでしょ?

金網をできるだけ写さないように撮るコツは次の三つ。

1,レンズの絞り値を開放に近づける。(ピントが合う範囲を浅くするため。絞りの値が小さい方がピントが合う範囲は狭くなる)
2,レンズの焦点距離をできるだけ長くする。(上に同じ。焦点距離が長い方がピントが合う範囲は狭くなる)
3,レンズから金網までの距離をなるべく近くする。(金網をピントが合う範囲からなるべく外してやるため)

こうすると手前の金網からはピントが外れ、ほとんど邪魔されずに済むのだ。


実はここで説明した内容は、実際に新入生に対して教えた内容である。
それなりに写真をやっている人ならば、知っていて当たり前の技法ではあるが、
新入生にとってはそれなりに新たな発見だったらしく、
「すごいです、こんな撮り方があったんですね。感激です」
って喜ばれた。なんか自分の写真を褒められるより、嬉しいかも。

さらに新入生のうち2人は、EFマウントのカメラを使っていたので、
サル山のサルを撮るときに、私の200mmの単焦点レンズを貸してあげた。
大学に入ったばかりの人たちにとって、なかなかこの手のいいレンズに触れる機会はないだろうから
今のうちにそういう経験をさせておくのもいいかな、とか思ったのである。


でも、200mm単焦点って、どういうシーンで使うんですか?と聞かれて、少しだけ返答に困った。
被写体をアップで綺麗に撮りたいときとか、スポーツの撮影とか、
・・・・・・後は遠距離ポートレートかな、と答えておいたが、
実際、たいていの場合においては、70−200mmの方が使いやすいだろうな。



そして、あまり先輩にくっついて歩かれても鬱陶しいと思うので、
頃合いを見て離脱し、他の集団を探すことにする。


シロクマさんが顔をあげた瞬間。
動物園で動物を撮る際は、あまり接近できない以上、それなりの望遠は必要ではあるが、
いい表情、いい動きをしている瞬間を捉える事ができれば、誰でもいい写真を撮れる。
大事なのは動物に対する愛と根気だ。
(135mmF2L使っている人間がそんな事言っても説得力無いか)


シロクマ撮影中に見かけた、現部長のオレンジ屋敷君(右)と元部長の直太郎(左)。
何か変わった組み合わせですね。


他にもシロクマ撮っている人がいるなぁ、と思ったらウチの2年生だった。

と言う事で今度は、彼女らと一緒に行動することに。
こういう機会でもないと、なかなか話す機会、ないしな。


色々話していると、こんな話が出た。
「一人だとなかなかカメラを持って歩くのって勇気がいるんですよ」
なるほどね、確かに最初のうちはそうかもしれないね。
私はもうすっかり慣れてしまったというか、感覚が麻痺してしまっているからわからんが。
おそらく他の新入生や2年生にも、そういう人はきっといるだろうから
今後もこういうみんなで何かを撮る機会を作っていくべきかもな。


あ、これは私がポーズとれって指示したわけじゃないよ。
でも自然とこういう事できる人って、やっぱり写真部では強いかもね。


続いて見つけたのは、あまり姿を見せない二年生の女の子達。
と言うか、会ったの半年ぶりくらいな気がしますが、私の記憶違いでしょうか。
尚、この4名はみんなコンパクトデジカメユーザー。


表情見てると、なんだかんだいってみんな動物撮るのが楽しそうだよね。
私は動物だけじゃなく、場の雰囲気ごと切り取る方が好きですけどね。


こんな感じでね。ホッキョクグマの親子と、それを見る群衆の様子がわかる、まさに記録用写真。
ただしこういう写真を撮るためには、少しでも高い所を探す必要があるのと、
そこに上らないと撮れないから、やっぱりちょっと一般人の行動を逸脱しちゃうんだな。



ところで、ここで個人的な事情を言わせてもらうと、だ。
コンパクトデジカメユーザーに、撮影技術を教えるというのはちょっと難しいのだ。
とくに全自動のグリーンモードを使う人だと尚更。
もちろん構図だとか、光の使い方だとか、立ち位置だとか、
コンデジでも工夫次第で写真を上手くする方法はいろいろあるのだがね。


ただ今は、小学生の女の子ですら、コンパクトデジカメを持っている時代だぜ。
大学生なら今はともかく、将来的にはもう少し撮影者の自由度のあるカメラを使ってほしいとは思う。


スズメ。動物園で飼育されている動物ではなく、ただそこら辺からやってきただけ。
「私、スズメが好きなんです」とか女の子のうちの一人が言ったから、撮ってみただけ。
望遠レンズ+トリミングを駆使すれば、これだけ寄れる。



動物園内に咲く桜。
いくら北海道とはいえ、多くの桜は既に散ってしまっているが、
種類によってはまだ咲いているものもあるようだ。


そして16時、最後に集合写真を撮って撮影会終了。
約2時間30分、あまり撮らなかった割には、あちこち歩き回って疲れたぜ。


冒頭で説明したとおり、今回の撮影会には焼肉と言う撒き餌がなかったのにも関わらず、
結構な人数の新入生や2年生が参加してくれた。
半分以上の新入生と、話す機会さえなかったのが残念だ。

あとはこれから、だな。


思ったより長くなってしまったので、後書きは省略し、後篇に続く。

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