2009/6/14 水無月十四日




労働基準監督官は、労働基準法等の法律により、その職務を遂行するために必要な権限等が
与えられているが、これらの規定が定められている法律の名称を労働基準法以外に三つ記述し、
また、労働基準監督官が法律により与えられている権限や行うこととされている職務のうち、
代表的なものを三つ記述せよ。


――以上 2009年度 労働基準監督官A採用試験(2009年6月14日実施) 専門(記述式)試験問題より





と、突然試験問題から始まる日記もどうかと思うが、私の日記がいつも破天荒なのは仕様だ。
前回の公務員試験(国家T種)の日の日記も、日本国憲法の条文から始まったしな。


さて、この始まり方からして、私が書く今日の出来事は大体想像できると思うが、
本日6月14日の日曜日は、国家公務員採用試験の区分である、
『国税専門官』、『労働基準監督官』、そして『法務教官』の採用一次試験実施日である。
尚、これらの試験は、全て同日に開催するため、同時に複数を受験することはできない。

今回この中で私は『労働基準監督官』の採用試験を選択し、受験することにした。



さて、『労働基準監督官』とは何ぞや、と思う人もいるだろう。
確かに公務員の中でも、あまり有名な方ではない(と思う)労働基準監督官、
だがしかし、その名前を見れば、おおよその職務は想像できるのではないだろうか?



ここで突然だが、冒頭の試験問題、一問目の答え。

労働基準監督官が権限を与えられている法律は、『労働基準法(101条)』以外には、
『最低賃金法(32条)』、『じん肺法(42条)』、
『炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(13条)』、『家内労働法(30条)』
『労働安全衛生法(91条)』、『作業環境測定法(39条)』
『賃金の支払の確保等に関する法律(13条)』
の七つが該当する。つまりこの中から3つ書けばいいわけだ。

二問目の答えを知りたい人は、各法令名がハイパーリンクになっているので、それをクリックして調べてくれ。


つまり、労働基準監督官は、これらの法律に基づいて職務を遂行するわけだ。
これで大体労働基準監督官の仕事がわかりましたね?

つまり労働基準監督官は……

 5,000万人の労働者の生命と健康を守り、人間尊重の基本理念に立脚した法定の労働条件を確保することを任務とし、
厚生労働本省又は全国各地の労働局、労働基準監督署に勤務して、労働基準法、労働安全衛生法などに基づいて、
工場、事業場などに立ち入り、帳簿・書類の点検、関係者の尋問、機械・器具の構造規格、性能及び安全装置の検査、
作業環境の測定などを行い、これらについて違反があった場合には、機械・器具の使用停止などの緊急措置を命じたり、
刑事訴訟法に規定する司法警察員としての職務を行います。
特に最近は、労働条件の確保・改善、労働災害の防止、職業性疾病の予防を推進する面でも
労働基準監督官の活躍が期待されています。 

という事だ。


・・・・・・何言っているのかわからねえよ、という人がいたらごめんなさい。
でも、これは人事院・厚生労働省による労働基準監督官採用試験受験案内に掲載されている内容なのだ。


まあ早い話が、ちゃんと従業員に給料を払っていない、勤務時間の規定が守られていない、など
労働基準法に違反する行為をしている疑いのある事業所や、
危険な作業を伴うのにちゃんと安全対策をしていない、労働環境が悪く労働者の健康を害する恐れがある、など
労働安全衛生法に定める規定を順守していない疑いのある事業所などに立ち入って、
その疑いが本当かどうかを確かめ、もし本当に違反していたならば処罰する、大雑把に言えばこういう仕事です。

労働者の生活や安全を守る、なかなか遣り甲斐のあるお仕事ですよ。





おっと、労働基準監督官の職務の解説だけでずいぶん行数を使ってしまったな。
ここから先は、試験の説明へと移ろうか。


労働基準監督官の採用試験は、国家T種や国家U種などの採用とは異なり、
最終合格の後に官庁めぐりをして、採用してくれる省庁を探すという行程はない。
必ず、労働基準監督官として採用される。
ただしこの試験もまた、最終合格したからと言って必ず採用されるわけではないのが頭が痛いところである。

また、この試験にはA区分とB区分があり、A区分は法文系、B区分は理工系の試験だ。
採用人数はA区分の方が多いが、受験者数は圧倒的にB区分の方が少ないため、
倍率で言えば、B区分の方が低くなる。
理工系から労働基準監督官になりたいと思う人があまりいないのだろうね。
尚、試験自体は専攻にかかわらず、どちらでも受けることができる。



という事で試験地へ。札幌だと札幌駅北口付近の第一合同庁舎2階が試験会場
北海道労働局が入っているのが、この建物だからね。

ところでこの試験、朝は8時45分までに着席、終了は18時と、数ある試験の中でも長丁場。
資格試験でもこれだけ長い試験は例を見ない。(二日以上に跨るもの除く)
私の中で一番長かった記憶があるエネルギー管理士でさえ、9時から17時20分までだからな。


試験は3部構成。
教養(多肢選択式) 9:00〜12:00(8:45着席)
専門(多肢選択式)13:00〜15:30(12:45着席)
専門( 記述式 )16:00〜18:00(15:50着席)


ああ、合計7時間30分。ここまで長いと最後まで集中力を保てるかどうかも勝負になってくる。


前回の反省を踏まえて、今回はちゃんと睡眠時間をとった。
更に1ミリ秒たりとも勉強しなかった国Tの時とは異なり、今回は労働法を中心に計2時間ほど勉強した。

って、2時間って公務員試験の勉強時間じゃないよね。

だがしかし、私にとってこの試験の要である労働関係の法律は、全く手を付けていないわけではない。
数年前に社会保険労務士試験を受けた際に、労働基準法や労働安全衛生法の条文などは読み込んでいるし、
海事代理士試験を受ける際には船員法(結構、陸の上での労働関係法規と似ている部分がある)をくまなく学習している。
昔取ったなんとやらが、どこまで通用するかは未知数ではあるが。



まずは多肢選択式の教養。

文章理解、数的推理、自然科学、人文科学、社会科学と幅広い分野から出題される事や
出題は55問で、25問が必須解答、残り30問のうちから20問を選ぶという事は、国家T種と同じだ。

ただ、難易度は国家T種より簡単だったので、推論と自然科学をフルボッコにする。
間違いない。この科目は絶対合格点取れた。


ところでこの試験だが、周囲にはやけに空席が目立つ。
ざっとだが数えてみたら、出席率はだいたい50%程度というところだろうか?
うーむ、この願書の提出時期が4月だからそれから2か月、
既に民間企業から内定を貰っていてそっちに行くことした人が結構な割合でいると言うことだろうか?
それとも、試験日程が重複する国税専門官と両方願書を出して、片方だけ受ける人がいると言うことだろうか?



午後に行われるは多肢選択式の専門試験。
必須科目は労働法や労働事情といった、労働基準監督官としての職務遂行に必要な内容で、12問。
あとは選択問題で、憲法、行政法、民法、刑法、経済学、労働経済、社会保障、社会学の38問から30問を選ぶ。

ここで結構厄介なのが、この選択科目。
全体のうち8問しか回避することができない事はすなわち
必ず法律分野と経済分野の両方を解かなければならないと言う事だ。
おそらくこれは、法学部で純粋に法律学だけを学んだ人間や、
逆に経済学部の出で法律をあまり学んでいない人間にとっては、ちょっと厳しい戦いとなろう。
私はこれには当てはまらないが、法律も経済も中途半端にしか勉強していないので厳しい戦いとなったが。



多肢選択式の専門試験が終わると、記述式の専門試験。
労働法が1問、労働関係が1問。
内容はまあ省略するが・・・・・・冒頭にある問題分のように、
労働関係の法律や社会環境に対して興味関心があり、きちんと勉強していれば苦労するような内容ではない。
私はきちんと勉強していないから苦労したがな・・・・・・。

ああ、あと10時間くらい勉強して、昔の記憶をもっと取り戻しておけば良かったぜ。
(焼け石に水か?)



試験が終わった時には、既にだいぶ疲れていた。
資格試験を受けまくりはじめた数年前からずっとそうだが、私の人生はむしろ日曜日の方が疲れる日程が多い。
ちなみに来週の日曜日は国家U種が、その次の日曜日が地方上級の採用試験。
今月の日曜日は、毎週のように試験日である。
日曜日が安息日であるユダヤ教徒とは相いれないな。



長大な試験時間をもって教養及び専門の多肢選択式試験、そして専門の論文式試験を一日で終わらせたので、
労働基準監督官の採用における筆記試験は今日で終了だ。
ただしかし、これが少しだけ曲者である。

次の二次試験の面接に呼ばれる人を決める際には、論文は一切見られず
教養及び専門の多肢選択式試験の点数を持って行われる。
その後、面接を含めたすべての要素をもって最終合格者を決めるのだが、
もしここで論文の内容が基準点に達していないと、それだけで不合格になる。

既に論文は書き終わっているわけだから、仮に二次試験に呼ばれたとしても
その段階で絶対に不合格が約束されていると言う事もあり得るわけだ。

実際、私はちょっとそれが怖い。




もっとも明日の発表次第では、そこに至る前に試合終了の可能性もあるわけだがね。二つの意味で。


何故二つの意味なのかは、明日の日記を見ればわかる・・・・・・ハズ。




















労働基準法(101条)
1 労働基準監督官は、事業場、寄宿舎その他の附属建設物に臨検し、
 帳簿及び書類の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行うことができる。
2 前項の場合において、労働基準監督官は、その身分を証明する証票を携帯しなければならない。




労働安全衛生法(91条)
1 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、
 関係者に質問し、帳簿、書類その他の物件を検査し、若しくは作業環境測定を行い、
 又は検査に必要な限度において無償で製品、原材料若しくは器具を収去することができる。
2  医師である労働基準監督官は、第六十八条の疾病にかかつた疑いのある労働者の検診を行なうことができる。
3  前二項の場合において、労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 




じん肺法(42条)
1 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要な限度において、粉じん作業を行う事業場に立ち入り、関係者に質問し、
 帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することが
 できない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)の作成又は保存が
 されている場合における当該電磁的記録を含む。)を検査し、又は粉じんの測定若しくは分析を行うことができる。
2 前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。




家内労働法(30条)
1 労働基準監督官は、この法律の施行のため必要があると認めるときは、
 委託者の営業所又は家内労働者が業務に従事する場所に立ち入り、帳簿、書類その他の物件を検査し、
 若しくは関係者に質問し、又は試験のため必要な最少限度の分量に限り、
 家内労働者及び補助者に危害を与える物若しくはその疑いのある物であつて厚生労働省令で定めるものを収去することができる。
2  前項の規定による立入検査等をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査等の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。




炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法(13条)
1 労働基準監督官は、この法律の規定を実施するために必要な限度において、事業場に立ち入り、
 帳簿、書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。
2  前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 




作業環境測定法(39条)
1 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、関係者に質問し、
 又は帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2  前項の場合において、労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3  第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。 




最低賃金法(32条)
1 労働基準監督官は、この法律の目的を達成するため必要な限度において、使用者の事業場に立ち入り、
 帳簿書類その他の物件を検査し、又は関係者に質問をすることができる。
2 前項の規定により立入検査をする労働基準監督官は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。

3 第1項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。




賃金の支払の確保等に関する法律(13条)
1 労働基準監督官は、この法律を施行するため必要があると認めるときは、事業場に立ち入り、
 関係者に質問し、又は帳簿、書類その他の物件を検査することができる。
2  労働基準監督署長は、第七条の確認をするため必要があると認めるときは、
 その職員に同条の事業主の事業場に立ち入り、関係者に質問させ、又は帳簿、書類その他の物件の検査をさせることができる。
3  前二項の場合において、労働基準監督官及び前項の職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者に提示しなければならない。
4  第一項及び第二項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。