2009/5/3 皐月三日




すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

この一節は、日本国憲法第15条の2項に書かれている。
公務員を目指す者なら、当然知っておくべき条文だ。


全体の奉仕者である公務員の中にも、国家公務員や地方公務員など様々な種別の公務員がいるが、
本日行われる国家公務員採用T種試験は、各省庁、そして国の行く先を頭脳として働く、
いわゆるキャリアを採用する為の試験だ。(以下本文中では『国家T種』で統一する)

そもそも国家公務員試験の制度について説明すると、
国家公務員を採用する試験としてはまずT種、U種、V種の三種類があり、
それ以外にも、国税専門官や労働基準監督官、法務教官などにおいて、独自の採用試験がある。

詳しくは人事院のWebページなどを見ていただきたいが、
ともかく、試験区分によって働く上で求められる役割が大きく異なっている。

国家T種で採用された人間は、その多くが本省(会社で言う本社、多くが霞が関にある)で勤務し
国の施策を立案したり、国会議員の答弁書を作成したりと、まさに国の根幹を担う仕事に就く。
よって現在、各省庁の上の方の役職は、だいたいが国家T種試験によって採用された人間で占められている。
もっとも、公務員試験制度を変えていこうという動きが見られるので
10年後、20年後もこのような体制が維持されているかどうかは定かではない。


公務員試験も、見方によっては数ある就職試験の一つに過ぎないわけだが、
国家1種の昨年の申込者は21200人と、なかなか多い数字である。
特に受験者として他の企業より良く見られるのが、大学卒業後にブランクがある人達。
何故かと言えば、多くの企業が新卒でなければ著しく不利になるのに対し、
公務員試験ではその点においてあまり差が出ることはないからだ。
また、エントリーシートや人間性が重視される民間とは異なり、
公務員試験の1次試験においては、筆記試験の点数さえ確保できれば通過することができる。
そのため、新卒で採用される事ができなかった場合に、再挑戦すべき目標とされることも多い。


ただ一方で、そこまで生ぬるい試験ではない。
例えば昨年の国家T種一次試験の合格者が2895人、合格率13.7%だ。
7人受験者がいればそのうち6人は、一次試験で姿を消すこととなる。



そして、本来新聞社を目指していたはずの私も
何故か国家T種試験を受けるべく、既に願書を提出していた。

もっとも、私が国家T種を受けようと思ったのは、今年が初めてではない。
昨年の就職活動時にも、国家T種も視野に入れており、願書を提出していた。
しかし、私には無理だと考え、試験を受けることなく終わったのである。

それから1年がたった今年、昨年よりも相対的に条件が悪くなった私は、
今度こそちゃんと試験を受けるべく、試験会場へとやってきた。


試験会場は北大の高等教育機能開発総合センター、
今まで何度も訪れ、数々の資格試験と戦ってきた場所である。



だがしかし、どうにもこの試験は身が入らない。

去年は試験会場に行きすらしなかったわけだし、
今年も試験は受けに来たものの、試験の為に勉強した時間は0秒だし、
今日の朝、朝日が昇り始めるくらいまでニコニコ動画を見ていたせいで眠くて仕方ない。

多くの人がこの試験に人生をかけ、必死に努力して受験している中で
このような体たらくで試験を受けるのは失礼な気がするが、
私があまりこの試験に対して身が入らないのは、
何も某新聞社を最終で落ちたからだけが理由じゃない。

というのは仮にこの試験の一次や二次で高得点を取り、最終合格まで至ったとしても
実際に各官庁に採用されるのは、東大や京大などの一流大学を出た人ばかりだから、
仮に実際はそうでないとしても、そうだというイメージがあるからだろう。
途中までは公平だとしても、最後の最後で結局落ちるのであれば、
努力するだけ無駄じゃないかという考えがどうしても拭い切れないのである。





札幌会場の試験申込者数は、この資料によると
文系課程を修めた人が主に受験する3区分は、行政が292人、法律が295人、経済が42人のようだな。
理科系なら理工Tが158人と多いようだ。

参考までに言えば、理工Tは『一般工学』、理工Uは『数理科学』、理工Vは『物理・地球科学』、
理工Wは『化学・生物・薬学』、農学Tは『農業科学』、農学Uは『農業工学』、
農学Vは『森林・自然環境』、農学Wは『水産』が主な受験者層である。
だからもし、今の私が理科系区分で受けるなら、理工Tで受験するだろうな。


ともあれ9時前には試験室に到着し、問題が配られるのを待つ。
まず午前中に行われるのは、教養試験。
この試験は、文章理解、数的推理、自然科学、人文科学、社会科学と
実に幅広い分野から出題されるのが特徴である。
普段から勉強していない人は、この範囲の広さに手こずると言う。

出題は55問で、25問が必須解答、残り30問のうちから20問を選ぶ。
文章理解と数的推理が全問必答、自然科学・人文科学・社会科学が選択問題だ。
試験時間は3時間あるので、それほど急ぐ必要はない。


試験開始後、私は真っ先に数的推理に取り掛かる。
この分野はミスさえしなければ得点になるし、私の頭だと眠くても精度が比較的下がらないのがこの分野だからだ。

一通り終えた後は、続いて自然科学に取り掛かる。
ご存じの通り、私は普通の文系とは違い、資格試験を通して理科系の知識を叩きこんでいる。
だから教養レベルの自然科学なら、私にとっては得点源だ。

もし自然科学ができなければ、どうしても人文科学及び社会科学の難しい問題とも対峙しなければならないが
私はそうではないので、人文&社会の20問から好きな問題を10問選んで解けばいい。
これはおそらく、他の文系区分受験者に比べ、かなり有利な点だろう。
このときばかりは、過去に色々な資格を取っておいてよかったな、と思った。

ついでに言えば、公務員試験の勉強はしていないものの、
新聞社の試験の際に勉強した時事の知識や政治・経済の知識が間接的に生きてくる。
こちらもまた、私にとってはフォローの風だ。

だがしかし、睡眠不足がちょっとつらい。
文章理解の問題において、最初から文章をきちんと読むのが億劫で困る。
今はまだ午前中だからいいとして、午後の専門試験で眠ってしまわないだろうか・・・・・・。


そして問題を解き終えて少したったところで程なく午前の試験が終了し、
お昼休み休憩をはさんだのち、午後の試験へと移る。

試験対策書など一冊も持ってきていない私は、軽く食事を取った後
建物の中を徘徊し、午後の試験時開始の時刻を待った。



午後に行われるは専門試験、私は法律区分で申し込んでいるので
憲法、行政法、民法、経済・財政が必須科目として、
商法、刑法、労働法、国際法が選択科目として、出題される。
54問出題の、50問解答。だから選択問題のうち4問だけ、解かなくていい。

この頃、私の眠さは最高潮に達していた。
特に法律系の試験は、延々と文章を読むことになるので、眠い頭には辛い。
資格試験を受ける際は、法律系の試験に関しては十分に睡眠をとって行くようにしているのだが
何故ここにきて、こんな状態で試験を受けたのか・・・・・・。
試験中に何度か半分眠りつつ、なんとか50問解き終えたようだ。



試験を終え会場を出ると、北大の敷地内には桜が咲いていた。
本州では卒業式、そして入学式のシーズンに咲く桜だが、北海道では5月のこのシーズンに咲く。


そういえば今からおよそ1か月前、某新聞社の面接試験を受けた日も
試験が終わった後、千鳥ヶ淵を歩いて桜を眺めたっけか。
そしてその日の面接は、通らなかった。


昔、まだ電報が主流だった時代、合格した際には「サクラサク」、
不合格だった際には「サクラチル」と打電した事もあるように
桜の花というのは、試験等の合否を示唆するシンボルである。
(和文モールスで『サクラサク』を打鍵すると、
「−・−・−  ・・・−  ・・・  −・−・−  ・・・−」となり、
 テンポよく入力できる言葉だったと言うのもあるが)
だから今の状況の私には、満開の桜の花は少々恨めしい。


まあ、この国家一種試験については、ここで終了しても
多分「ああそうか」くらいにしか感じないだろうけどな。
というか、ここで終わりなのを既に織り込んでいるしな。
新聞社は一年越しだし、ある程度本気出して落ちたから「サクラチル」が堪えたけど、
国家一種は、見ての通り、大した努力もせずに適当に受験したからね。

二万数千の受験者と言っても、きっとその中には私のような人間が多数混じっているんだろうな。
人事院発表の資料によると、今年の申込者数は22,185人、
採用予定者に対する受験者の倍率は37.6倍との事らしいが、
実際、この中で本気で受けている人はどのくらいなのでしょうね。


試験会場を出たのちそのまま南下し、札幌駅付近に行ってみると
ビックカメラにピカチュウが出没していた。

そういえば世間はゴールデンウィークの真っ最中。
私には昨年に続き今年も、ゴールデンウィークなど関係ない日々を送ることとなってしまったが
今年は不況の折から、この時期別に休みたくもないのに長い休みをとらされる企業もあるとか。
果たして、どちらが幸せなのかね・・・・・・。