2007/8/8 葉月八日





厚田にて。

  まだ見ぬ陸を信じて
  何故に鳥は海をゆけるの

  約束を載せた紙は風の中
  受けとめてくれる人がいるだろうか

                               中島みゆき 「最後の女神」より






昨日サイトを閉鎖した。

結局試験は受けられなかった。

何となくこんな日に札幌に居たくなかった。

何故かウロコダンゴが食べたくなった。


そしていつもより早く目が覚めてしまった。



と言う事で(どこがと言うことなのか知らないが)、私は朝から北へ向かうことにした。
国道231号線を全線走破することを目的にした意味のない1人ドライブ。

思い立った時の瞬発力だけは高いが、持続力に欠ける私らしい行程だった。



北34条の国道231号線始点よりスタート。
遥か幌延まで続くオロロンラインのスタート地点でもある。
まだ午前8時代、南行は通勤時間の真っ最中のため混雑している。

石狩市内を一気に走りぬけ望来へ。
海水浴シーズンなので渋滞を警戒していたが、そこまで混雑していないようで安心した。


望来を一望できるこの坂は、ビューポイントとして指定されている。
ご丁寧に駐車スペースもある。

峰泊、古潭、小谷、別狩、ここら辺は大分走りなれたな。
今日は道は何も語りかけてこない、フラットの状態である。


厚田本町にて。札幌から40キロくらい。
この場所は結構来る。厚田村最後の日にもここを訪れた。
お店らしいお店はこれだけで終わり、小さな集落だ。
札幌からの距離としては、千歳や岩見沢と同じくらいなんだけどな。


滝の沢、太島内、赤岩の3本のトンネルで安瀬を抜けると、
厚田と浜益の境目である濃昼に到着する。
普段はただ通過するだけの場所だが、小さな港にちょっと寄り道。
防波堤に登って眺めれば、集落の全景が見えてくる。

ここから浜益まで行くには一般的には現在の国道の送毛トンネルを通行するのが一般的だ。
しかし今の国道が開通する前の道が、送毛山道として現役で残っている。
ダートの強烈な道らしいが、なかなかいい眺めらしい。
今回は231号線を完全走破すると言う目的があるので本線を通るが、今度行くときがあれば旧道を通ってみよう。


ここ毘紗別まで来れば、いよいよ浜益に来たと言う実感がわいてくる。
海岸の奥には柏木、川下そして浜益地区が見える。
毘紗別もかなり小さな集落で、見知らぬ他人である私がウロウロしていると住民も気になるようだ。

国道451号との分岐がある柏木を過ぎ、川下地区に入る。
川下地区は柏木と浜益本村のちょうど中間くらいにあるが、
絶好の海水浴場であり、この時期(だけ)はとても賑わっている。
ちょっと様子を見てみようか。

駐車料金は1000円、流石に15分ほどの滞在の為に1000円払うのは馬鹿らしいので
遠くに車を止めて歩いてくることにする。


はぁ、やはり海はいいなぁ。
照りつける太陽の日差しは暖かく、絶好の海水浴びよりである。
泳ぐ人たち、砂浜でみんな楽しそうだ。


何かこの空間の中に1人でいるのが少し悲しいな。
しかもカメラ機材を担いで海岸を徘徊、どう考えてもおかしい。
こんな事やっていないで、私も普通に海で泳ぎたいぜい。

だったら1人で泳げばいい?1人で海水浴か、それは流石にやった事がないな。
やろうと思えば簡単だけど、やろうとも思わないな。
と言うか、私は海水浴がしたいのではなく、海水浴をして楽しむ人たちの気分を味わいたいの。
1人で海水浴をしたって意味ないでしょ?

海岸でカメラを翳しつつウロウロしていたら、
誰か1人くらいが突っ掛かってくるかと思ったが、みんなただ単に無視ですね。
まあ、それが正解でしょう。私と戦ったって得られる物は何も無い。私は楽しいけど(何


灼熱の海水浴場をウロウロしていたら暑くてたまらないし、
海水浴場の何枚か画が欲しかっただけなので(取材かよ!)、さっさと先へ進もう。

郡別、幌、床丹、千代志別にも立ち寄りたかったが、あまりゆっくりしていると
この先の日程がきつくなるので今回はパス。


そして雄冬に到着。留萌管内に突入だ。
かつては陸の孤島と言われた雄冬ではあるが、道路が出来てからは来やすくなり
私も年に何度もここに立ち寄ったり通過したりしているわけだが、
何故か今まで展望台に登ってみた事がなかった。ちょっと行ってみようか。


展望台の上から雄冬地区を眺めると、確かにここが他と隔絶された集落だと言う事がわかる。

もうお昼か。9時前に札幌を出たのに、随分時間がかかっているな。
寄り道のしすぎのようだ。


増毛町へ入り、岩老、岩尾、歩古丹、別苅を過ぎると、やっと町らしい規模の町が見えてくる。増毛の町だ。
国道は増毛の町に入らずに山側を迂回するので、今回は私も増毛を通過。

左手に海、右手に留萌本線を眺めつつ北上すると、留萌市に入る。
今までが今までだったので、このくらいの街でも随分と大きな街に見える。


国道231号線終点にして、国道232号線、233号線との交点である。
これにて国道231号線の旅は終了である。
余談だがここのガソリンスタンドはレギュラー1リットル127円、
札幌市内で140円が普通のこのご時世に、何故?

留萌市内で昼食をとる。ラルズプラザの中の食堂を利用したが
注文は間違うし値段も間違うし。やはりあまり客が来ないようだね。



三泊、臼谷、小平、オロロンラインを北上する。
小平から北側の232号線は、苫前までこんな感じで海のすぐ傍を通る。
この場所は冬に海が荒れると、大変な難所になると言う。

また多くの人たちはこの道路を通るとき左、すなわち日本海を眺めるのだが
ある属性の人たちだけは延々と右を見続けるのだと言う。
尚、私もまた右を見続ける属性の人である。

一部、沿岸バスの名ガイドの台詞より拝借。


道の駅『おびら鰊番屋』に到着。
このまま稚内まででも走っていきたい気分だったが、今日は予定通りここまでで折り返す。
しかしここまでこれば、札幌と稚内はだいたい等距離なわけで、
このまま札幌に帰るのも何か惜しいのである。


元来た海岸線を戻り小平の町へ。車を止め、歩いて街を散策する事にする。
小平の町を通過する事はよくあれど、きちんと町の中に入っていったのは初めてかもしれない。


小平中央公園に行ってみる。
ここは旧国鉄羽幌線の小平駅があった場所だ。
もはや駅の遺構などは跡形もなく撤去されてしまっているが、
そう言われてみれば何となく線路跡がわかりはしないかね?

尚、国鉄羽幌線が廃止されたのは1987年3月29日だが、
国鉄が民営化されJRになったのが1987年4月1日だ。
これが何を意味するか、わかる人はわかるはずだ。


小平の町には冬に日本海から強烈な風が吹き込むため、
海と町との間にはこのような木の板が設けられ、風雪を防ぐ試みがされている。
これが無いとどういうことになるかは、冬に国道232号線を走ってみればわかる。


留萌の街へ戻る。続いて留萌の街を撮影しようと思ったが、空も曇ってきたし、あまり時間は無い模様。
まあいいや、留萌の街ならまた誰かとでも撮りに来る機会があるだろう。こういう街がすきそうな人もいるし。


せめて黄金岬から夕日でもと思ったが、曇っていて全く夕日は見えそうに無い。
まあいいや、今度は国道233号線でも全線走破しつつ帰るか。


ここで空裂蟹沢氏より、札幌は凄い雨だという情報が入ってくる。
うまく私は雨を回避できたようだ。さて、雨が降り終わるころあいを見計らってゆっくり帰るか。

17時55分、国道233号線を深川に向けて走り始める。
道はそれなりに混雑しているようだが、深川留萌自動車道が来ている幌糠まで来ると
他の車は皆そちらへ入り、233号本線は一気にがら空きとなった。

深川留萌自動車道は深川西I.Cまで暫定無料開放されているので
あまり一般道を走るメリットは無いと皆判断するのだろう。

私は国道233号線を走りきるのが目的なので、あくまで一般道を走るが
皮肉な事に車列が出来ている高速道路より、がら空きの一般道の方が早い。
高速道路は片側1車線の中央分離帯付で遅い車がいるとどうにもならないが、
一般道は対向車線を使っての追越が可能だし、そもそも他に走る車がいないのだから。

昨年廃止された東幌糠駅跡(と言ってももはや跡形も無かったが)を通過し、美葉牛峠を越える。
相変わらずスピードを緩める必要は無く、非常に走りやすい。
一般道でもこれだけ走れるのなら、ここに高速道路を造った意味があるのかと思うが
もし並行する高速道路が無ければ、おそらく国道は車列が出来てこんな快適には走れないだろう。
なんか妙なレトリックである。高速道路が有料化されたらどうなるかが見ものだ。

北竜ひまわりI.Cを越えてもやはり車は増えない。
ここから国道は碧水を、高速道路は沼田を経由し、秩父別で再び接近する。


ここら辺の一般道は、非常に走りやすいのだが・・・・・・何、前にある乱層雲は。
明らかに前方の空が暗すぎる。まずいな・・・・・・。

と思いきや秩父別町内で強烈な雨が降り注ぐ。
ワイパー最速でも追いつかないほどの降水量、霧よりも狭まる視界。ほぼ何も見えない。
道もベチャベチャでハイドロプレーニング現象がいつ起きてもおかしくない状態。
雨を回避したと思うのは早計だったようだ、札幌までこの天気が続くのでは厳しいぞ。

秩父別町内を徐行しつつ深川に抜ける頃には、雨も小降りになっていた。助かった。


深川駅前を抜け、音江地区へ。ここが国道233号線の始点かつ国道12号線との交点だ。
この場所には道の駅、『ライスランドふかがわ』がある。


深川名物「ウロコダンゴ」である。結局、これが食べたいが為に深川まで来てしまったのかもしれない。
真空パック詰めのものもあるので、お土産にもどうぞ。


今日の目的は終わった。後は札幌へ帰るだけだ。
ここからは深川のI.Cが直ぐなので、さっさと高速を飛ばしてもいいのだが
一人で高速道路を使うのはもったいないな。
たまには12号線を延々と走ることにしよう。

19時07分、深川を出る。滝川までは片側1車線の道。
速度は遅い車により50km/h程度に抑えられる。

滝川市街に入れば、道路が二車線になりなかなか快適だ。
国道12号線は旧道とバイパスの2つに分かれているが、旧道を通行する。
意外とこちらも車の流れが良く、苦にはならない。

ここから札幌までの到達時刻は、一般道利用だとしても、
信号が少なく走りやすい国道275号線の方が早いだろうが
国道12号線の場合、ずらりと並んだ市街地の青信号を、一気に駆け抜けるのが心地よい。
「進路、オールグリーン!!」なんてね。


砂川、奈井江、美唄の市街地を駆け抜ける。ここら辺はいわゆる日本一長い直線道路だ。
20時07分、美唄市街を抜けた辺り、やはり1時間ではなかなか進まないようだ。
経済速度で巡航しているように思えても、結構信号に引っかかっているからな。

美唄から三笠、岩見沢、江別、そして札幌。
21時07分、深川を出て2時間経過した時点ではやっと厚別北である。
いつもこの区間、高速若しくは275号線を使うから、12号線を走ったときの時間が読めなかったが
やはり結構かかるようですな。

岩見沢で4条通り(国道12号線の旧道)に進入したせいかもしれないが。



こうして私の意味不明行程は全て終了した。
ただ行きたいから行った、走りたいから走ったのであり、そこに何かがあるわけではないのだが
不安定な精神状態の私にとっては、ちょうどいい安定剤になった気がする。

しかし私にとって1人ドライブは、“面白いのだが楽しくはない”。
それが自ら望んで行っているものであるのは明らかなのだが、
それがまるで業であるかのように走り続けている感じがする。

同じ一人旅でも、鉄道やバスで出かけるときは非常に面白いし楽しい。
この違いは一体何なのだろう?


1人で無意味に走ると、無駄が過ぎるような気はするのだよね。
私が乗ろうが乗らまいが影響が無い公共交通に比べ、
私が移動する事で間違いなく環境負荷が増えている自動車は、何か私の性に合わないかも。
(これがバイクだったら、また話が別なのかもしれないが)

と言いつつも、なんだかんだ言ってどこかへ走っていってしまうのだがね。業だから。



それとも、1人よりは多人数で移動する方が楽しいというように、私の感覚が変化したのだろうか?
まあ、それはそれでいいさ。



しかしこの分野においても、日帰り行程を突発的に行うのは簡単だが、
1週間くらい道内を彷徨って来いといわれると、なかなか大変そうな気がする。

やはり私には持続力が足りない、色々な意味で。