2007/8/5 葉月五日






千歳航空祭にて。6機のブルーインパルスによる展示飛行である。
航空祭は、普段あまり見られない航空自衛隊の活動を見ることができる貴重なイベントなのだ。

航空祭は千歳のほかに三沢(青森県)、矢本(宮城県)、小松(石川県)、新田原(宮崎県)などでも行われ
飛行機ヲタの方々などの中には、全てハシゴする人もいるとか。





ガソリン価格が高騰している。
最近NY市場の原油先物価格は再び最高値を貫いたこともあり、
今後のガソリン価格も当面下がる気配を見せないだろう。

しかし、ガソリンが高いからと言って使わないのも難しい。
いや、私は公共交通だけで移動しても全く問題ないのだが、
多くの交通機関を乗り継ぐ場合や、複数人で移動する場合などは、
是だけ高騰した燃料代とは言え、まだまだ自家用車に分がある。

となればどうするか?
私が目をつけたのは、単位走行距離あたりの燃料消費量の減少に努める事である。
つまり燃費を向上させ、同じ燃料でより長い距離を走れば、燃料代の値上がりとある程度戦えるのではないかと言う事だ。

私は以前から出来るだけ省エネルギー走行を心がけていた。
位置エネルギーの活用、アイドリングストップの敢行などで、出来るだけ航続距離を伸ばそうとしている。

ただ、まだまだ不十分なところはあるため、これを機会にもう少し理論的に燃費の向上を図れないかと思い
Webサイトを閲覧し、また物理学的に考えてみた。

すると3つほど、今まで考えていなかった論点が書かれていた。

・上り坂は考えている以上にエネルギーを消費する。
・高速走行時のエネルギーロスの多くは空気抵抗
・高速度にあるほど、同じ速度だけ加速するのには多くのエネルギーが必要

どれも、物理学をちょっと嗜んでいる人ならすぐわかることなのだが
自動車運転と物理学をそこまで結びつけて考えた事が無かったので、私はそこまで考えなかった。


--------------------物理が嫌いな人は暫く読み飛ばしてください--------------------
(以下全てSI単位に基づき、単位系はmks単位系を用いる)


1番目の「上り坂は考えている以上にエネルギーを消費する」だが、
坂を上るということは、運動エネルギーを位置エネルギーに変換すると言う事だ。

位置エネルギーというのは、mgh(質量×重力加速度×高さ)で計算する事ができる。
1tの車を10mの高さまで持ち上げるのに必要なエネルギーは
1000×9.8(地球上の重力加速度)×10で98kJとなる。

これと同じエネルギーを平坦な道で使えば、時速50.4キロメートルまで加速できる計算になる。
運動エネルギーは0.5mv^2(2分の1×質量×速度の二乗)で計算できるので
98kJをこの式の右辺に入れて計算してやれば求まるのだ。

もちろん位置エネルギーに変わったエネルギーは、坂を下るときに運動エネルギーに戻す事ができる。
しかし、運動エネルギーは即ちそれ“速度”なので、位置エネルギーを全て運動エネルギーに換えて使おうとすれば
ギアをニュートラルにした状態でフットブレーキを使わずに坂をくだらないとならない。
しかし下り坂にはカーブもあるし、途中にある信号で停止しないとならないときもある。
さらにはいくら頑張ろうとも“速度”になった以上、後述する空気抵抗で食われてしまう。

だから場合によっては、「ノンストップで走れる近い山道」より、「距離は長くて信号もあるけど平坦な道」の方が
燃料消費量を節約する事ができる可能性がある。

札幌で言えば、今までは西に行くとき、早いからと言う理由で
アップダウンの激しい『北一条宮の沢通』さらには『藻岩山麓通』を使っていたが、
おそらく想像している以上に燃料を食っていた事だろう。
燃費のことを考えるなら『北五条手稲通』や『新川通』を走った方がいいのかもしれない。



2番目の「高速走行時のエネルギーロスの多くは空気抵抗」についてだが
空気抵抗は0.5×Cd×ρ×A×u^2(2分の1×抵抗係数×空気の密度×前面投影面積×流体との相対速度の二乗)で
計算する事ができるが、これは流体力学の分野に入り、私のレベルでは
自分の頭で漠然と理解する事は出来ても、人様に説明することは出来ない。

もっとも精密な計算をするのでなければ、「空気抵抗は速度の二乗に比例して大きくなる」位の認識でいいのだが
これがどういうことを意味するかといえば、「走行速度を1.41倍にすると、空気抵抗は倍かかる」ということだ。

具体的な数値を出せば、時速112.8キロで高速道路を走ると、時速80キロで走る場合に比べて倍の空気抵抗がかかる。
もちろん空気抵抗に逆らうためには、それだけ沢山の燃料を消費する事になる。

実際時速100キロ付近では、消費されるエネルギーの半分くらいが空気抵抗だと言う。
私は今まで“経済速度”を考えるとき、エンジンの効率ばかり考え
移動する物体が想像以上に空気と戦っている事を初めて知った。
これからはあまり必要以上に空気と戦わない事にしよう。


3番目の「高速度にあるほど、同じ速度だけ加速するのには多くのエネルギーが必要」、
これは高校物理レベルの簡単な話だが、意外と盲点であった。

1tの車が静止した状態から時速20キロに加速する際に必要なエネルギーは
0.5×1000×5.55^2(mks単位系なので計算には秒速を用いる)で15.4kJ、
しかし、同じ20キロ毎時分を加速するのでも、時速40キロから時速60キロに加速する際は
(0.5×1000×16.67^2)−(0.5×1000×11.11^2)で77.2kJが必要だ。

これは運動エネルギーが速度の二乗に比例するためだが、
高速度になればなるほど、速く走るためには更に大量のエネルギーが必要になってしまうのだ。

よって高速域での加減速は、予想以上にエネルギーロスが大きい事が伺える。
カーブが多い道を速く走るためには、直線で加速してカーブ手前で減速を繰り返す方法があるが
燃料節約の観点から言えば、賢い走り方ではなさそうだ。

--------------------物理的なお話はここで終わり(でも今後も混入するかも)--------------------


本日、航空自衛隊千歳基地で航空祭が行われており、それを見に行くために運転するため
これらの省エネルギー走行の知識を早速実践投入してみようと思う。


まず千歳までのルートを選択する必要があるが、まあいつもどおり『羊ヶ丘通』でいいか。
って、ちょっと待て。『羊が丘通り』は前述した『北一条宮の沢通』と同様の
「早いけどアップダウンの激しい道」じゃないか。

ああ、全然勉強したことが生きていないぞ。
燃料節約の観点から言えば、国道36号線を通るべきだったな。


三里塚から北広島へ抜け、道央自動車道へ入る。
空気抵抗は思ったよりエネルギーを食うので、時速80〜90キロで巡航する事にしよう。
さらに追い越しは無駄な加減速を伴うので我慢我慢。

まてよ?そういえば、スリップストリーム現象を使って更に空気抵抗を減らす方法が書かれていたな。
前車の後ろにぴったりくっついていくと空気抵抗損失が減少する、と。試してみるか。
全車が大型車である方が効果が大きく、車間距離が狭い方が効果覿面らしいが
残念ながら今日走っているダンプやバスはみんな早くてついていけない。

仕方ないので、時速90キロくらいで走っている普通乗用車の後ろにピッタリつける。
その車間距離はだいたい10m〜15mといったところか。


ええ、想像以上に危ない行為です、これは。
時速90キロで走行している場合は、1秒に25mの距離を進むので、
とっさの場合に備えて、前の車がブレーキを踏んでから0.4〜0.6秒で
ブレーキを踏める体勢にしていないとなりません。

ああ、ただスピード出して走るよりも、時速50キロで高速道路を走るよりもよっぽど怖いわ。
(良い子は絶対真似しないように)

前の車からすれば私の存在は、
「遅いのが不愉快ならさっさと追い越していけばいいのに、延々と真後ろにベッタリ張り付いてくる車」
です。あちらにしても恐怖の存在だった事でしょう。



燃費向上走行は、スピードを出さないし、急発進急停止などをしないので
一見安全運転に見えますが、安全運転とは全く異なるものです。

前述したように、スリップストリームを得るために前車に極度に張り付いたり
フットブレーキを極力使わないために、惰性走行する区間が長くなって後続車に迷惑をかけたり、
一旦停止するとエネルギー損失が大きいため(動摩擦係数より大きな静止摩擦係数がかかるので)
赤信号の大分前で減速して、信号が青になるまでノロノロ走り続けたり、
さらにやりすぎると「前方信号黄色?多分止まれるけど運動エネルギーがもったいないから行ってしまおう」
などと考えるようになります。

いくら燃料を節約しても、事故を起こしては何にもならないので、
あまり燃費向上に躍起にならないように気をつけましょう。(自分が気をつけろよ)




まあそんな経緯はあれど、千歳基地に到着。基地内の駐車場に車を止める。
凄い車の数だ。場所が場所だけに、みんな車で来ているのだな。


出店もいっぱい出ており、千歳基地限定のラーメンやカレンダーなど色々売っている。


メーンイベントのブルーインパルスの飛行まで少し時間があるので、
用を足しにトイレの中に入ったわけだが、そこで面白いものを見つけた。



過去にいったい何があったの?
そもそも多少の下痢では、便座に被害が出る事は無いと思うのだが。
でも、この文章を見る限りでは、過去にそういう事態が起こった可能性があると考えるのが自然だよね。
考えれば考えるほどいろいろ解釈できるこの文。謎は深まる。
(お食事中の方はごめんなさい)


滑走路の方に向かうと、既に凄い人だ。
千歳市民の他に、全国各地から飛行機ヲタが訪れているからねえ。
尚、写真右側にある日の丸を背負った飛行機は政府専用機だ。(千歳に常駐している)


十枚ほど群衆を撮影した後、望遠レンズに付け替える。
私は飛行機ヲタではないので、あくまで普通の望遠ズームレンズである。

飛行機ヲタはみな、バズーカ砲のような大口径のレンズを実装している。
私はそんなものは無い。そんなもの買っても、私の普段の撮影には使わないからな。


と言う事でブルーインパルスの編隊飛行。
嘉手納基地でラプターを撮影したときはうまく撮れなかったが、今回はまあまあだな。


ここでK.K氏と合流する。彼はここ4年間滋賀県に封じられていたので
高校のとき以来の千歳航空祭になるみたい。

我々はその後も暫く、貴賓席の傍でブルーインパルスの曲芸飛行を楽しんでいた。



イベントが一通り終了した後は、地上に展示されている各種ユニットを見て回る。
戦闘機やヘリコプター、ペトリオットなどなど。
人気のある機体とそうでない機体で、人の集まり方がはっきりと違うのが面白い。
F−15Jはやはり人気が高いが、P−3C対潜哨戒機のようなマニアックな機体はあまり人気がなかった。


国産飛行機YS−11。昨年の9月に国内の旅客運送からは引退しました。


パンフレットに寄ると、AV−8ハリアーが展示されているはずなのだが、見当たらなかった。
見たかったな、VTOL(垂直離着陸機)。



15時の終了後すぐだと帰る車で大渋滞するので
15時30分頃まで待ってから駐車場を出ようとしたが・・・・・・。


これである。駐車場内から大行列が出来てなかなか出られません。
終了から30分程度待っただけでは解消しなかったか。

待ち行列に耐えかねてか何か怒鳴っているDQNもいる。
「室蘭300 さ 7555」の中の人よ。自衛隊相手に怒鳴っても仕方ないと思うが。

しかし、競馬がメインレースの後に最終レースを設けて帰る人の流れを分散しているように
航空祭においても、そういう配慮があっても良かったとは思う。
プログラムの一番後ろに一般人は興味ないようなマニアックなイベントを挿入するとか。

結局、基地から脱出するのに1時間かかった。
当然ながら待っている間はアイドリングストップを忘れない。

基地から出た後も付近道路があちこち渋滞しているので、
何度も何度も脇道や抜け道に入り、できるだけ停止しないように帰った。
渋滞は燃費向上の大敵だからね。





千歳航空祭、今まで何故か行く機会が無かったが、なかなか面白かったな。
しかし、基地脱出に1時間と言うのは・・・・・・。
やはり公共交通利用の方がいいのかね?しかしシャトルバスも大混雑だったと聞く。

まあ、来年行くとしたらそのときに考えればいいだけだ。