2007/6/25 水無月二十五日




本日朝5時台、私は自遊空間にて道路交通法の条文と睨めっこしていた。
昨日の祭りからビリヤード、ダーツなどを行って夜を過ごしたわけだが
朝一番に、手稲の札幌運転免許試験場に行って運転免許に関わる特殊な手続きを行うからだ。

今月の初めまでは、私の運転免許は『普通』、『大特』、『小特』、『原付』が表示されていた。
それが、今月行われた改正道路交通法の施行により、
『中型(8t限定)』、『大特』、『小特』、『原付』へと、既得権によって勝手に昇格してしまった。

普通の人なら、免許の表示が変わるだけで、運転できる車の種類には変わりないので別に何ら困る事はない。
しかし、私のような死格マニアにとっては、このままだと大変な事が起こるのだ。

フルビット免許をご存知だろうか?
全ての免種が表示された免許の事であり、運転免許マニアには憧れの存在である。
法改正前までは、大型、普通、大特、大自二、普自二、小特、原付、け引、大二、普二、大特二、け引二、の
12種類全てが表示された免許の事だったが、今回の法改正により中型免許が増えたので
大型、中型、普通、大特、大自二、普自二、小特、原付、け引、大二、中二、普二、大特二、け引二、の
14種類の表示がされた免許のことを指すようになった。

このフルビットは誰でも時間と資金をかければ目指す事ができるが、お約束として必ず下位免許から
順に取得していかないとならないという制約がある。
上位免許を取得した状態では、下位免許の取得ができなくなるからだ。

さて、私の免許証の場合はどうだろう?
旧普通免許が中型免許(8t限定)に勝手に格上げされ、普通の表示が消えてしまった。
ここで新たに普通を取得しようにも、中型免許は普通免許の上位免許なので、
『中型』を表示した状態のままでは『普通』を新たに追記することはできない。

これは困ったわけだが、こういう人のために(本当は目的が違うのだが)特別な制度が存在する。
道路交通法104条の4、申請による取消しという制度だ。


第百四条の四  免許を受けた者は、その者の住所地を管轄する公安委員会に免許の取消しを申請することができる。
       この場合において、その者は、第八十九条第一項及び第九十条の二第一項の規定にかかわらず、併せて、
       当該免許が取り消された場合には他の種類の免許
       (取消しに係る免許の種類ごとに政令で定める種類のものに限る。)を
       受けたい旨の申出をすることができる。 
     2  前項の規定による申請を受けた公安委員会は、政令で定めるところにより、
       当該申請に係る免許を取り消すものとする。 
     3  前項の規定により免許を取り消した公安委員会は、
       第一項の申出をした者から第百七条第一項第一号の規定による当該免許に係る免許証の返納を受けたときは、
       その者に対し、当該申出に係る免許を与えることができる。 

   (以下省略)

更に言えば、上位免許と下位免許の関係については、道路交通法施行令第39条の2の2及び
平成17年5月27日政令第183号の未施行内容に記載されている。


まあともかく、この条文があるおかげで、上位免許を自主的に取消申請し、返す刃で下位免許を受けることができる。
要は、中型免許を自主的に返納し、中型免許の下位である普通免許を受け、
大型特殊免許、小型特殊免許、原動機付自転車免許は引き続き保持するというわけだ。

この手続きを行って、表示を再び『普通』、『大特』、『小特』、『原付』に戻せば
下位免許よりも先に上位免許を取ってしまった状態が是正され、再びフルビットを目指せるようになるのだ。


と言う事で、朝の駅前通を北上し、札幌駅へ。
ここで私は函館本線上り、クロサワ氏は千歳線上り、クワノ氏は函館本線下りと三方向へ散る。

しかし時間はまだ7時を過ぎたばかり。
運転免許試験場の手続き開始は8時45分からだ。
時間までは手稲駅の周囲で撮影でもして過ごそう。


札幌行のホームライナー。こんなに行列が出来るとは知らなかった。
良く考えると、朝の手稲に来たのは始めてかもしれない。
札幌市内においても、朝の風景を見た事が無い場所って、結構いっぱいあるな。
もう少しいろいろ回ってみたいが、朝起きるのが大変なのよね。

しかしまだまだ時間がある。
せっかくなので手稲駅南口に行き、女性専用バスでも見てくる事にした。

バスを求めて南口を彷徨う様子は完全に不審者なので、誰かが話しかけてきたら、
「見ての通り不審者ですが何か?」
と答えてやろうと思ったが、好き好んで不審者に話しかける馬鹿はいない。

そして暫く待つと、JR札幌駅行の女性専用バスがやってきた。


何だろうこのデザインは。
そして前面LED方向幕、側面LED共に、女性専用バスの文字があり。
私は、女性専用バス違憲論者なので、強行乗車を試みて反応を伺いたいところではあるが
今日は運転免許試験場に行くという予定があるのでまた今度。

その後は手稲駅北口でウロウロし、ちょうどやっていた民主党の演説でも聞いた後、
8時20分のバスで、運転免許試験場へと向かった。


8時45分、運転免許試験場では試験の受付が始まる。
そのため、本日学科試験を受ける人たちが列を作っている。

さて、私の行う手続は、各種手続や相談を行っている7番窓口だな。


と言う事で7番窓口で手続開始。


AAAAAAAAAA(以下A)「道路交通法第百四条の四の規定に基づく
  免許の取消の申請を行いたいのですが、担当者の方をお願いします」

係員B(以下B)「えーと、免許の取消の申請ですか?」「はい、中型免許8t限定を取り消し、同時に普通免許の付与をお願いします」「わかりました、中型免許を取り消して、普通免許にする、と。
  そのような事は手続上は可能ですね。しかし、何故そのような事を行うのか理由をお聞かせ願えますか?」「ここで陳述した理由が、この申請の結果に影響を与える事はありますか?」「いえ、申請の結果には関係ありませんが、わざわざ今まで運転できた物を
  運転できなくする手続きを行おうとする人はあまりいませんし、普通は意味がありませんから
  どういう経緯で免許の取消を行いたいのかと言う事をお聞かせ願えないか、と言う事で」「なるほど、わかりました。では・・・・・・
  既得権により中型車を旧普通免許によって運転するのは、中型免許創設に至った趣旨を鑑みると
  あまり望ましい事では無いと判断し、中型車を運転する際は、既得権を利用しての
  限定解除という形ではなく、新たに取り直すべきだと考えた事、
  また、数年前に小型特殊免許から順に取り始め、全ての免種をそろえる事を目標にしていた事から
  その目標を達成するために必要不可欠な事から、取消を申請しました」「はい、わかりました。それでは取消の手続きを致しますので、こちらまでお越しください」

と言う事で、奥の方にある相談窓口に移動することになった。

少しお待ちくださいと言われた後、窓口の奥のほうで別の係員と共に
なにやら法規集らしき物をひたすら調べるB氏、滅多にありえない手続きなのでこうなる事は予想できたが。

暫く経つと、調べ終えた係員がこちらにやってきた。

B「では、手続きを行いますので、とりあえず収入証紙を購入してきてください」「いくら分、買えばいいですか?」「まず2250円です。内訳として、まず免許発行に関わる基本手数料の1650円、
  さらに、一免種表示させるごとに200円が追加になりますので、
  AAAさんの場合は、普通、大特、小特、原付を表示させたいと言う事ですから
  基本手数料に三免種分の料金が加算されて、2250円となります」


と言う事で、収入証紙を購入するために証紙売りさばき所へと移動する。
ここで何か言われる可能性はないと思っていたが


A「収入証紙2250円分お願いします」

窓口のおばちゃんM(以下M)「はい・・・・・・2250円?間違いない?」「間違いありません、2250円分の証紙をお願いします」「・・・・・・ねえ、2250円分の証紙がいる手続きって何?」

窓口のおばちゃんN(以下N)「さあ、知らない。とりあえず書類見せてもらって」「ごめんなさい、ちょっと申請書見せてもらえる」「はい、どうぞ」「・・・・・・何だろう、この申請書」「うーん・・・・・・わからない。」「・・・・・・いや、特殊な申請なので2250円で間違いないので・・・・・・」「ああ、“特殊”なのね・・・・・・はい2250円分」


まあ、仕方ないか、どうせ私は“特殊”だから。


証紙を持って窓口に戻る。

B「まだ証紙は貼らないでくださいね、記載事項に誤りがないか、これでいいかどうか確認してください」「・・・・・・確認しました。記載事項に間違いありません。」「では証紙を貼って割印かサインをお願いします」

これにて書類は無事受理された。


B「では、新しく免許に使う写真を撮りますので、こちらへどうぞ」


係員に連れられて、写真撮影のコーナーへ。
そうか、この手続きを行えば、免許証の写真が更新されるんだね。
まさか、写真の変更のためにこの手続きを行う人はいないと思うが。(格下げしないとならないし)

写真コーナーのおばちゃんO(以下O)「はい、次の方どうぞ」

私は写真機Cの椅子に座る。

A「申請書はこちらに置けばいいですか?」「はい、そちらに置いてください・・・・・・ってこの申請書は何でしょう?」「免許取消手続に関わる申請書なのです」「この方、ある事情で免許証を新しく作り直すんですよ」「え?え?免許の更新じゃ、無いんだよね」「そうですね、まあ、ちょっと特殊な事情があるみたいで・・・・・・」「ああ、“ワケあり”の人か。“ワケあり”の人は写真機Aの方がいいんじゃない?」「そうか、じゃあすみませんがAAAさん、写真機Aに移動してもらえますか」「はあ、わかりました」

ワケありの人用の写真機Aって・・・・・・何が違うのだろう?
見た目にも、写真を撮ってもらった感じも変わらないが・・・・・・。

B「では写真撮影が終了しました、免許証が出来上がるまでもう少しお待ちください」


それから10分程度だろうか、新しくなった免許証が出来上がった。
といっても、免許の更新でもないし、新たに取得したわけでもないので発行日などは変わらず。
変わったところと言えば、裏面にスタンプを押された事と、写真、
そして免許の種類の欄のマスが、12種類から14種類に増えていることか。

運転免許取得の道 12分の4まで来ていたのが、14分の4まで逆戻りか。

中型免許の既得権を捨てるのは、免許の効力的には馬鹿らしいし、
上位免許を取るときの教習料金にも影響してくるけど・・・・・・。
まあ、これですっきりした。4年前に、全面種埋めるって決めたんだ。
ここでいまさら撤退するなんていう選択肢ははなから想定していない。

と言う事で、これで心置きなく上位免許を目指せるわけだ。
とりあえず次に狙うのは、中型一種→大型一種か、大特二種→普通二種あたりを考えている。
しかし運転免許試験の一番の問題は、やはり資金をどうするかだなぁ。
持ち株やポジションを何とかすればその程度の資金は確保できるのだが
その資金を他の試験に費やせば、もっと色々な試験を受けられると思うと、ちょっと躊躇する。

まあ、どちらにしても多分そのうち取るんだから、早いほうがいいかな?


一仕事終えた後は、いつもどおり稲穂駅まで歩き、各駅停車で札幌駅を目指すのであった。

手続きの所要時間は1時間少々、思ったより早かったな。
係員がきちんと理解していたのが大きいと思うがね。


どうでもいいことだが、この手続きを行った場合は古い免許証を受け取る事は不可能である。
第百四条の四の3項において、返納を受けた場合に新しい免許を与えるとあるからだ。

さらに、取消申請書はこんなのである。
右下に理由の記載欄があるが、多くの人は高齢や身体機能の低下などを理由としてこの申請を行うわけだ。
もっとも、法律の条文にはそういう言葉は一言も書かれていないので、
私のような使い方をする事には何らの問題もない。
ただし、既に別の試験場においては、断られた例があるらしい。

その場合は道路交通法104条の4の存在を知っている事を仄めかし、
かつ上記したような内容の理屈を展開すれば、多分申請が受理されると思う。