2007/6/20 水無月二十日




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足立 成亮 写真展
「ひゅっとでてくる」

2006年6月20日(水)〜7月1日(日)
OPEN 11:00〜20:00 ※火曜定休

会場:FLOWMOTION real shop + cafe and gallery
〒080-0015 北海道帯広市西5条南13丁目11番地
TEL 0155-21-5506 
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面倒なのでコピペで済ますが、帯広にてこんな写真展が開かれるらしい。


数日前に、これ見に行くために帯広まで行くか、と言っていたのだが、
話は電撃的に進行し、昨日、行く日を今日に決めたのであった。
つまり、昨日の今日で帯広行きを決定したわけだ。

今回行くのは、旅とネタをクレイジーに愛す私AAAAAAAAAAの他に、
足立氏を敬愛するRUNNER氏、写真のためなら命を賭けかねないnoct-氏、
街とモノクロ写真が大好きなy@5u5hi氏、
そして写真家にて鉄ヲタでもあるsorami氏と、ディープなメンバーが揃った。
みんな、昨日の今日で日程を確保したフットワークの軽い奴ばかりである。

と同時に、全員が比較的多くの枚数を撮るフォトグラファー(?)なので、
おそらく帯広までの道のりの間に、何度か運転停車ならず、撮影停車があることだと思われる。


しかし、この後に待ち受けている過酷な運命を知る物は、誰一人としていなかった。





と言う事で朝8時過ぎ、行程は山鼻地区のmicroよりスタート。
月寒高校の前を通りつつ、札幌市内を東へと走りnoct-氏の家へ。
警音器を使ってHR HR BT(モールス信号で通信開始する際の合図)を送ったら
近所迷惑だから止めろと言われる。それもそうだ。

運命の刻まで、あと6時間35分


平岡より直接274号線に入らず、札幌新道、大曲通、北広島駅付近を経てR274へ。
道東までひたすら続く大動脈、今日はあまり流れも早くない。
よって馬追丘陵付近で並行する道道を走ってみたりする。

ここら辺の道路は千歳、由仁、栗山と次々と市町村が変わっていく。
対向する車は大型貨物車が多く、おそらく殆どは日勝峠を超えてきた車だ。

一方車内では、noct-氏がFMトランスミッターを使って、様々なネタ音源を流している。
手持ちは1万曲以上あるとのことだが、一体どこからそれだけ引っ張って来ているのだろう?

そして車は夕張市に入る。
ちょうどスーパーおおぞら3号が来るはずの時間なのだが、残念ながら見られなかった。

運命の刻まで、あと5時間35分


紅葉山にあるセイコーマートで一旦休憩を取る。
この地点で札幌からやっと70キロ程度。まだまだ先は長い。
ここでy@5u5hi、noct-両氏が、どこかに撮影に行ってしまう。
10分程度で戻ると言いつつなかなか戻ってこないので、
石勝線の本線と、夕張支線の分岐点を見に行っていたら
今度は彼ら2人が274号線を楓駅方向に歩いていた。

まあ、ネタ的にはこの前の「オコタンポイ」じゃないが、
放置しても良かったのだが、色々面倒な事になるので、先の方に止まって待っていたのだが
彼らは一向にやってくる気配なし。
274号線上に長時間停止するのは、交通の阻害要因になるので避けたいのだが。

さっさと進みたくとも彼らはなかなか此方に来ないし、
かと言って止まっているのは、後ろから来る大型車の妨げになる。
さあ、どうすればいいんだろうね。

少し進むと、速度違反取締の警察官がいた。
低速走行をする私の車を見て不審に思ったらしいが、
一般道なので最低速度制限は無く、取締りの対象にはならない。
もっともこのままでは交通に支障が出て大迷惑なので、林道へと続く側道へと誘導された。

運命の刻まで、あと4時間55分




楓、そして登川を過ぎれば夕張市も終了で、
いよいよここから『樹海ロード』の名の通りの、深い森の中を走行する道が続く。
続いて入りますは鵡川町である。(本当はひらがな表記だが、ひらがな市町村名は嫌いなので敢えて漢字で)
ここが鵡川と言われても変な感じがするが、旧鵡川町が穂別町と合併したので
鵡川町の町域が、こんな山の中まで拡大したのであった。

長い穂高トンネルをくぐると、道路は少しの間だけ占冠村を通る。
占冠村を少し走ると、分岐点の標識が見える。
一部、シールで覆ってあるが、下には『道東道』の案内が透けて見える。
この区間の国道に並行して、道東自動車道が建設中なのだ。

今年の終わり頃か来年の早いうちに、道東自動車道のトマム〜十勝清水間が開通する。
そうすると、札幌〜十勝以東への最速ルートは、現行の日勝峠経由から
ここの分岐点から占冠本村方面へ抜け、道道136号を経由してトマムから高速道路に突入するルートになる。
よって日勝峠が大動脈である時代も、今年が最後かもしれない。


そして車は占冠村を抜け、日高町に入る。
道の駅『樹海ロード日高』は、久々の休憩地点だ。
近くには役場や郵便局など、様々な施設が揃っている。

運命の刻まで、あと3時間55分


さて、ここからはいよいよ峠越えだ。
ここまでの道のりも山道が続いていたが、これから超える日勝峠は
道内、いや日本全国でも屈指の難所である。

もちろん道路自体は、砂利道かつ一車線の幅しかない林道に比べれば全く大したことは無いが
急勾配と急カーブが続く道なのにも関わらず、交通量が多く流れも速い事から
慣れたドライバーでもあまり通りたくないと思う道なのである。

もっとも、急勾配や急カーブにもまして、この峠の最大の敵は気象条件であり、
夏は視界を30m程度まで遮る霧が、冬は吹雪とアイスバーンが、
通過する車を地獄へいざなおうとするのである。


日勝峠の入り口付近にいる熊さん。いろいろ書いてあります。
尚、峠での交通事故死者数は1人とのこと。

道路は深い森の中を沙流川に沿ってゆっくりと高さを稼いでいく。
ところどころ隧道や覆道があり、薄暗いイメージがある。

少し気になるのは、上りで全然加速できない事。
上り勾配が見た目以上にきついのか、はたまた冷房などの影響でエンジン出力が落ちているのかは知らないが、
今まではここまでパワーを食われる事は無かったように思われる。
まさかアクセル全開にしているのに追い抜かされるとは思っていないから走行車線を走っていたわけだが、
実際はスピードが上がらず、登坂車線から追い抜かされるという変な状態に。
意図的に妨害しているのではなく、思ったように走れないのだ。何故だろう?

そして日勝峠の274号線頂上へ行った後、細い砂利道に入りさらに上を目指す。

ここから見下ろすと頂上より十勝側を走る道路、そして車が見える。

さて、エンジンを止めた後の車から、不思議な音が聞こえる。
ズゴゴゴゴと言うような音。おそらくクーラーの冷却水か何かが循環している音だろうとy@5u5hi氏は言うが
それにしては随分と重々しい響きであり、そして長く続いている。

何故か上り坂で速度が上がらない事、車を止めた後も鳴り止まない音、
そう、今思えばこれは予兆だったのだ。

運命の刻まで、あと3時間05分


日勝峠は、日高側と清水側で大きく姿を変える。
延々と細い山道を登っている感覚の日高側に対し、
清水側は幾重ものカーブを何度も何度もクネクネ曲がりながら山肌をよじ登っていく感じである。
もっとも、私にとっては下りなので、高速で急なカーブをこなしていく事になるが、
ブレーキを踏める直線が少なく、エンジンブレーキを利用しても、ついスピードが出てしまう。

峠の途中にある休憩所で少しお休み。
ここから十勝平野が見渡せる。しかし十勝側はあまり天気がよろしくないみたい。
これからの行く末を暗示しているのだろうか?

運命の刻まで、あと2時間35分


無事に日勝峠を降りきると、程なくして十勝清水の街に入る。
そこまで大きな町では無いのだが、今まで自然ばかりの所を見てきた後だと随分と都会に感じる物だ。
帯広まで向かうなら、ここから国道38号線でまっすぐ行けばいいのだが、
我々はちょっと寄り道して、北に進路を取る。
足立さんの写真展は20時まで。写真展は逃げない。
ゆっくりあちこちで写真撮影してから行けばいいさ。

車は国道38号線にルートを変えず、国道274号線をそのまま進行。
先ほどまで札幌と道東の大動脈だった国道274号線だが、
清水から先の区間は、良くある閑散とした国道の姿を見せている。


鹿追に向かう途中、美曼にて少し休憩。
と言うか、後部座席のnoct-氏らが撮影しているのを見て、私も撮りたくなったところ
ちょうどいいところに駐車場があったから止まったという話。

運命の刻まで、あと1時間45分



道の駅『しかおい』到着。所在地はちょうど鹿追町の中心部で、すぐ近くには町役場もある。
私はここでアスパラを大量購入。具体的な値段は書かないが、恐ろしく安い。
家に持って帰って食べる予定。

運命の刻まで、あと1時間30分


その後、予定通り鹿追そばを食す。
ここまでは、ちょっと遅延しているとはいえ、だいたい予定通りだ。
まあ遅延は、あちこちで撮影のために車を止めているから仕方が無い。
まあ、20時までは時間があるし、17時代には帯広に入れるだろう、多分。

もっともこの予測は、考えもしなかった事態によって大きく狂っていく。

運命の刻まで、あと45分


さらに国道274号線を標茶側へ。
標茶側と言う表現が適切なのか定かではないが、一応国道274号線の終点は標茶なのでいい事にしておこう。

途中、sorami氏が、札幌から200kmのキロポストを見つける。
少し前にも、札幌から200kmのキロポストをどこかで見たような気がするが・・・・・・
そうだ、名寄からの帰りに国道275号線の朱鞠内付近で見たのだ。
札幌から200kmのキロポストって、おそらくこの2箇所だけだよね?
それ以外の札幌に流入する国道は、函館始点だったり、距離が200kmも無かったり。
もしかしたら道央自動車道の八雲付近にあるかな?


さて、道の駅『うりまく』に到着。「うりまく」は「瓜幕」と書く。
ここでは乗馬の体験が出来るようであり、訪れていた観光客が馬に乗っていた。

運命の刻まで、あと20分


ここから然別湖方面へ向かうか、それとも士幌方面へと行くか。
時間もあまり無いので迷ったが、noct-氏の強い希望により然別湖へと車を進める事に。

よし、素早く然別湖に行って、すぐに戻ってこよう。20キロ弱なら1時間もあれば戻ってこれるだろう。
こう判断して、道道85号線へと向かった。


然別湖まで続く道道85号線、交通量は殆ど無いといっても良いが
森の中を進む道であり、勾配はかなり厳しい。
先ほどの日勝峠よりもパワー不足を感じる次第である。

空には先ほどからヘリコプターの姿が見える。
ここら辺一体は、自衛隊の演習場になっているようだ。


美しいまでのアップダウンを伴う直線道路である。
しかしこのときは、この後に待ち受ける過酷な運命など知るよりも無かった。

運命の刻まで、あと5分


途中、扇ヶ原展望台にて休憩を挟もうかと思ったが、
時間節約のため、そのまま湖を目指す事に。
この判断が違っていれば、この後の運命も変わっていたかもしれない。

然別湖まであと数kmという地点に差し掛かったそのときである。
ボシュッっと言う音がなったかと思うと、周囲に白い蒸気が立ち込めた。

「何だ?今の音。自衛隊の演習か?」
「この煙は何だ、発炎筒でも踏んだか?」

車内は騒然となった。後ろを振り返ると、後方視界が蒸気で真っ白だ。

「違う、これはこの車からの発生だ!異常事態だ!」

一瞬、何が起こったのかわからなかった私だが、道道の14のキロポスト付近で緊急停車した。


車から降りて確認すると、冷却水が殆ど外へ漏れ出してしまっている。どうやらオーバーヒートのようだ。
これが暫くすれば回復する物なのか、深刻なダメージを受けているのかは判断できないが
とりあえずエンジンが冷えるのを待たないとここを動く事はできなそうだ。

ともかくこれ以上、坂を上るのは不可能だ。
これからどうするか、考えなければならない。

一つ考えたのが、位置エネルギーを使ってとりあえず下まで、つまり瓜幕付近まで降りられないかということ。
今まで上がってきた坂を、エンジンをOFFにした状態で
重力のエネルギーだけで降りることができないかと言う事だ。

この方法は理論的には可能だと思うが、エンジンを使えない以上、様々な制約がかかる。
油圧式ブレーキが信じられないほど重くなり、パワーステアリングも使えないので、
恐ろしく高度な運転技術が必要になる。
低速で走れば多少はリスクを軽減できるが、途中に少しでも上り勾配があったらそこで終了してしまうし、
高速で下るのは、文字通り命を賭けた無謀な試みになりかねない。

とりあえず、私が持っているクレジットカードのロードサービスを利用する事にした。
鹿追町の業者を案内してくれる事になったので、輸送費も1万円あれば何とかなるだろう。

しかし、場所が場所だけに業者が来るのに50分程かかるという。

地図で言えばこのあたりだが、まさに何も無い。
とりあえず、我々5人は付近で撮影して時間を潰す事に。
まあ、怪我人が出なかった事とネタ許容限度が高い人ばかりだったのが唯一の救いか。


地面に這い蹲って撮影するnoct-氏。
彼は故障後、然別湖まで歩いて、バスで帯広に移動する事まで考えていた。
私以上にトラブルに強いかもしれない。


ちょうど50分が経過した頃、ロードサービスの車が来た。
故障に至った経緯を話すと、やはり自走不能と判断され、下までレッカーする事に。

レッカー代、10キロまで無料、以降1キロにつき600円。
行きに比べて、1キロが非常に重く感じる。
そして自動車修理業者に到着、先ほど鹿追そばを食べた店のすぐ向かいであった。
ちょうどここまで22キロ、料金7200円。まあ、仕方ないか。

写真はイメージです、多分。

すぐさま車は点検に回されるが、やはり自走は不可能だろうと判断。
もともと車で移動する予定であったが、それはどうやら無理だと言う事なので
今後の対応を決めなければならない。

まず今回の行程に参加した皆さんをどうするか?
まだ、帯広で写真展を見ると言う当初の目的を果たしていないが・・・・・・。


さて、この車は私の車じゃない。
故障で自走不能とわかれば、その後の対応について父親に伺わなければならない。
「・・・・・・と言う事なんですが、いかがいたしましょう?」
「札幌まで陸送してもらえ」
「へ?札幌までですか?10万円かかりますよ?一番近い清水の拠点まで運んで、直るか見てもらった方がいいのでは?」
「故障がすぐに直るのか、直らないのかわからないんだろ?
 だったら最悪廃車の判断をしないとならないから、とりあえず自分の陣地まで運べ」
「しかし陸送費10万円は・・・・・・」
「10万と言うが、もし修理する事になったら、修理代は多分10万円じゃきかないぞ
 そして廃車になったら新しい車を買わないとならない、それらの絡みも全て考えて判断しろ」
「費用負担については、どうなりますかね・・・・・・」
「それは今後の展開によって考えよう、とりあえず週末に札幌帰ったらヤキだ」

と言う事で、札幌陸送が決定しました・・・・・・。
鹿追から札幌まで約200km、1kmあたり500円の贅沢な旅の始まりです。

「まあ、レッカー車で長距離移動するなんて滅多に無い事だから、よく味わっておくんだな」

ええ、そうですね。でもできることなら味わいたくありませんね・・・・・・こんなの。




私は車と共に札幌強制送還が決まり、写真展を見に行けない事が確定したが、後の4人はどうするのだろう?
選択肢は4つほど。

一つ目が、私と共に強制送還される方法。
費用はかからないが、恐ろしく乗り心地が悪いうえ、写真展も見に行けない。
(そして道路交通法違反の疑いもあるが、詳しくは知らない)

二つ目が、ここから清水までバスで出て、札幌までポテトライナーで帰還する方法。
札幌到着は1つ目の選択肢と一緒だろう、しかしお金がかかる。

三つ目が、ここから帯広までバスで出て、最終のスーパーおおぞらで帰る方法。
写真展も見れて今日中に帰れるが、けっこうな費用が発生する。

四つ目が、帯広に一泊して明日ポテトライナーで帰る方法。
帯広市内で時間を確保できるため、noct-氏あたりが選択しそうである。

ちなみに結果としては、自動車修理業者の従業員の1人が、ちょうど帯広まで帰宅すると言うので
ご好意により帯広まで送ってもらう事になったようだ。



そして私は、敗戦処理の為、陸送車に乗り込んだ。
1キロ500円、タクシーより高い。
鹿追〜札幌10万円、まさかこんなに高額な交通手段があるとは思わなかった。
もっとも、重量辺りの単価で考えれば、車1台で人30人分強くらいなので
ポテトライナーと同じくらいの価格になるかな?

タクシーで、十勝と札幌を移動したと言うならば、少しはネタにもなるかもしれんが、
車を壊して陸送車で運んで10万円では、笑い話にもならん。

結局、写真展、見られなかったな。
ああ、西の空に太陽が沈んでいくね。
あの山の向こうに札幌があるんだね、遠いなあ。







美曼を超え、清水町へ入る。
そこで陸送車のドライバーが突然車を止めた。

「先ほどはエンジンが扱ったから試せなかったけど、そろそろ冷えてきていい状態になっているんだよね。
 ちょっと、やり残した試験があるから、注水したのち一旦工場まで持って帰って
 もう一度確認させてもらってよろしいか?」

はあ、まあ別に構いませんが。

「じゃあ申し訳ないけど、ちょっと戻るね。
 結果次第ではもしかしたら帯広まで走った後、札幌まで戻れるかもしれないよ」

ここに来て敗者復活戦フラグですか?

またまた美曼を超えて鹿追に戻る。既に日は沈み、辺りを夕闇が包んでいた。



と言う事でエンジンをかけ、試験スタート。
過負荷試験でもやっているのだろうか?回転数を上げて、様子を見ている。


さて・・・・・・。

もし改めて自走が可能であると言う判断が出れば、このまま帯広に寄った後
狩勝峠を越えて(札幌方面へは狩勝峠がもっとも緩やかなので、念のため)帰ることができる。
それなりの修理代がかかるだろうが、陸送の10万円まではかからないと思われる。

自走不可能なら、予定通り陸送だ。さらに札幌到着時刻が大分遅くなる事になる。
まさに天国と地獄だな。





そして結果が出た。

エンジンからの吹き戻しがある模様。

数キロ〜数十キロなら走れるが、峠越え、ましてや札幌までの帰還は無理との事。

無理をすればまた同じ事が起きる、とも。


まあ、そんな予感はした。
そう都合よく行くわけはないのだ。


本日4度目の美曼を超え、清水、そして日勝峠へ。
陸送車の助手席より、去り往く十勝を、ただ呆然と眺めていた。


「・・・・・・少し、時間を貰ってもいいですか?」
行きにも立ち寄った日勝峠の展望台で、私は運転手に尋ねた。

運転手は快く時間をくれた。


つい数時間前、ここを通った。曇ってはいたが、十勝平野が一望できた。
まさかこの場所を、こんな形で通過するとは思わなかった。
つい数時間前には、帰りを野塚峠にするか、狩勝峠にするか、それとも三国峠にするかなんて話していたのに
日勝峠を、それも自走不可能で戻る事になるとはね。

夜景が眩しかった。まるでクロスフィルターを通したかのように。



そして頭痛に襲われた。10日前に私を苦しめてくれたあの頭痛と一緒だ。
しかし、それは私を深追いはしなかった。
症状自体は札幌まで続いたが、大した苦にもならなかった。


夕張から道東自動車道に入る。いよいよ札幌も近い。
途中、雨が降り出した。冷たい雨、暗い雨。

三里塚から都心へと向かう道。
道はいつもと変わらない。街もいつもと変わらない。
ただ私は明らかにいつもと違う。

ただいま、札幌。
たった200kmしか離れていなかったのに、物凄く遠くから帰ってきた気がするよ。

11時を少し過ぎたところで、ぼくの旅は終わった。
長かったな・・・・・・。
しかし札束を受け取った運転士の旅はまだ終わらない。
ここがやっと中間地点だ。

車をいつもどおりの位置に戻した。これで、いつもと外見は何ら変わらない夜が訪れる。









長い一日だった。