2007/5/2 皐月二日





私は現在、紆余曲折はあれど法学部に在籍中だ。
大学3年、そろそろ進学するにせよ、就職するにせよ目星をつけていかなければならない時期だ。

私が就職先として目指す職種は、未だ分野を絞り込むには至らないが
技術系の職種の中から選択しようと考えている。
事務系の職種は全く考えていない。私の適正的に合うとも思えないし、
中学生くらいのときから、技術屋もしくは研究職を夢見ていた以上、やはりそちらを選びたい。

ところが、だ。
殆どの企業では技術系での新卒者採用を行う際、法学部卒になど門戸を開いていない。
法学部と言うだけで、技術職は書類選考でアウトどころか、
募集すらされていないのだから、下手したら選考段階にすらいかない。

私が就職希望先として考えている企業についても、ここのところ採用情報を調べてみたが
技術職採用において文系学部の人間など、全て見事なまでのシャットアウト。
唯一門戸が開放されていると言えば、情報系の職種だけだが、
そこにおいても理科系マターの分野についてはやはり文科系は立ち入り禁止と言ったところだ。


もっとも、私だってそういう事実は昔から知っていた。
だからこそ理科系を目指したわけだし、高校生の頃から
「理科系の課程を修習しながら文科系の勉強を個人的にするのは可能だが、
 逆は不可能だし、採用においても同じだ。
 さらに私は理科系の学問の方がどちらかと言えば好きだ。だから私は理科系課程を選ぶ」
と言っていた。それがどこかで狂ったから、パラレルワールドに突入したという表現を用いて、
望んだ未来と選んだ未来の乖離を嘆いていた。

ただそれと同時に、乖離の是正、つまり望んだ未来と選んだ未来の再合流を
常に願い、またそうしようとして色々考えていた。
理科系課程に戻りたいから、大学に入学した後もセンター試験を受け続けた。
理科系課程を習得し、技術系の職種に就く事が、
パラレルワールドと現実を同一化させる最適解であったからだ。

だがその試みもうまくいかなかった。


そんなこんなで私ももう大学3年生、更に言えば、もし2年の浪人期間が無ければ
既に就職しているか、大学の修士課程で更に高度な学問を学んでいる頃だ。

いい加減に大学再入学などという青い夢を見てばかりもいられなくなり、
現実を考えなければならない年になってきた。

しかしその結果見た現実が
「技術系は法学部卒は採用しません」
では・・・・・・門前払いの未来を見て、一体私は何を目標にすればいいんだろうか?



少し話は変わるが、高校時代、倫理の時間にY崎先生がキルケゴールの実存主義について教えてくれた。
人は第一段階の「あれもこれも」から、第二段階の「あれかこれか」へと成熟する過程があると言う。

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人はだれでも、感性と理性をもち、美的世界と倫理的世界をもって生きているが、
その両方に住もうとすると、結局は、「美的世界」にのみ住むことになり、
「倫理的世界」に住むという決断によって、初めて、人は倫理的かつ美的世界に住むことができる。
それ故、「あれも−これも」というのではなく、「あれか−これか」と言い、人々に決断を迫るのである。
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私はその当時のレポートに、
「『あれかこれか』を迫られるのは、片方しか選べないくらいの能力しかないからだ。
 能力が高い人間ならば、『あれもこれも』を選択でき、より高みを目指せるはずだ」
と言うような内容のことを書いた記憶がある。

私は今でも、この考えは正しいと思っている。
さらに「二兎を追う者は一兎も得ず」と言った普遍的な格言より、ある漫画に出てきた
「一兎しか追わない者は一兎しか得られない、二兎を追う者のみが二兎とも得られる可能性を持つ」
の方が優れた教訓だとも思っている。


だが、どうやら私はそのような能力が高い人間ではないようだ。
高校時代にはそれに気づく事はなく、努力すれば自分は「あれもこれも」が出来るはずだ、
などと思い込んでいたが、後になって気づいた。
「努力できないのもまた人の能力だよ」とね。

そして私の最初の前提がおかしいなら、文科系と理科系は並立できないと言うなら、
文科系課程と理科系課程のどちらかしか選ぶ事ができないのなら・・・・・・。

私の答えは既に決まっている。
たとえ今まで歩いた道が全て消え失せるのだとしても、未来まで消え失せるよりはマシだ。



ただ、少し気になる事がある。
どうして私の場合は、これだけ文科系の風に吹かれても、意識の変化が一切見られないのだろう?
例えば高校において、理科系コースを選んでいたが、挫折して文科系に流れた人は少なくないはずだ。
しかし私以外に、理科系の勉強がしたかったのに何故か文科系学部に入学する事になってしまい、
かつ高校卒業から4年もの月日が流れているのにも関わらず意志が変わらない人は、私の周囲では他に1人しか知らない。
信念の違いなのか、何かそれに至る過程が欠けているのか、はたまた・・・・・・。


とりあえず、重大な決断をするのはもう少し先にするとして
まずすべき事は、私の理科系学問に対する知識を、
最低でも国公立大学の工学部や理学部の奴等と対等に戦えるくらいまでは引き上げる事だ。
そして理科系知識の証明になるような資格試験と戦って、勝っておく事も並行して行おうと思う。
具体的に言えば、夏の一種放射線取扱責任者、二種電気主任技術者、
さらには秋の技術士一次試験あたりを考えている。

来年の就職活動に間に合うようにするためには、今年1年の資格試験戦線がある意味勝負の年になる。
履歴書に書けるか書けないかの境目だからな。


正直、今の私では門戸が開いていないと文句を言うのはまだ早い。
来年、他の理科系大学生を上回る能力になる事が出来たにも関わらず
全て門前払いされてしまうようならば、その時言いたいだけ言えば良いさ。(余計手遅れのような気もするが)
他者に文句を言っていると、自分の成長が止まってしまうからな。

甘いのかも知れないが、10社出せば1社くらいは、
法学部が技術系採用の区分にエントリーしても、門前払いはされないのではないかと思っている。
安倍内閣は再チャレンジを推進しているし、こういう形の再チャレンジも面白いだろう。