2007/5/10 皐月十日





「新入生が元気すぎて私の居場所が無い」
と言う4年生の台詞が聞こえそうな程、今日の写真部部室は新入生同士で盛り上がっていた。
先日の新入生歓迎パーティでも大暴走を見せてくれた新入生だが、
今日は部室でも弾けていて、既存の人たちが避難するような状態だ。

「AAAさん、少し新入生が居づらい空気を作ってきてください」
と私に頼む人まで現れる始末。なんと危険な注文をするものだと思ったが
私もあまり新参者に制空権を握られるのを快く思っていないので、少し場を冷ましてやる事にした。

私が本気を出すと、最高潮に盛り上がった高校の学校祭の高揚ですら一瞬でぶっ壊してしまうので
まずは出力を最小限に留めて、様子を見てみる事にした。

「あれ?ずいぶん机の上が汚くなっているなあ、昨日掃除したはずなんだけどどうしてだろうねえ」
と、わざとらしく新入生に聞こえる様に言ってみた。
無視されるようなら更に段階を強化してやろうかと思ったが、
その必要は無かったようでみんな話を止めて机の上を片付け始めた。

なるほど、一応それなりに空気を読む能力は備わっているのね。

とりあえず制空権を取り戻したのだが、私が
「ちょっと石狩でも行くついでに戸田墓苑で桜でも撮りに行ってきますか」
と言うと、その台詞に約2名の新入生の男の子が目ざとく反応した。
「桜撮りに行くんですか?僕達も連れて行ってください」
「この後どうせ暇なんで、後で札幌駅にでもおろしてくれればいいですから」

「私がどういう人間かも知らないでついてきて、後悔しても知らないよ?」
と言ったにも関わらず、全く考え直すつもりは無いようである。

まあ、私としては行程の邪魔さえされなければ特に断る理由も無いので、
殆ど面識の無い新入生2名を連れて、厚田望来までの珍道中が始まった。
新入生2名を連れ出した事で、部室には平穏が訪れただろうが、果たして此方はどうなるのだろうか?


スタート直後は後部座席で2人で色々喋っていて、このまま延々と厚田まで行くのかな?と思っていたが
(まあ、タクシーを運転していると思えばいい話なのだが)
一応私の話にも耳を傾ける事はするようで、少しは安心した。
意外にも周囲の建物や景色などに興味関心があるようで、そちらの方で私と話が合ったからかな?

渋滞する創成川通を避け、藤女子大学の傍を通りつつ国道231号線へ。
厚田までは只管ここからR231を北上する。
篠路、茨戸、花畔を経て石狩川河口橋へと差し掛かる頃には、
未踏のエリアに足を踏み入れるためか、新入生も旅気分を楽しんでいるようだ。

新入生2名のうち、1人は小樽の人、1人は恵庭の人で、札幌から先へ行く事はあまりないとの事。
厚田方面は札幌市民でもあまり足を運ばないし、更に遠くからだと無理も無いか。
(1人は花川までは自転車で来たことがあると言っていたが)

厚田区へと入り、聚富、望来と進んだところで戸田墓苑到着。
ちょっと思ったより時間がかかってしまったな。
開園時間が17時までなのを忘れていて、入れないかと思ったが
入園ゲートのところに居たおじさんの計らいで10分だけ入場させてもらった。
(ちなみにそのおじさん、関係者かと思いきやそうではなかった。ちょっと謎である)


園内には8000本の桜があるらしい。その一部。

もっと奥まで行きたいが、時間がない。無駄足にならなかった事だけでも感謝しなければ。

園内には戸田城聖さんの像がある。有名な方であるのでいまさら説明は不要であろう。



10分の滞在時間は、広大な園内を見て回るにはあまりにも短かった。
もう少し早くこればよかったな。


このまま帰るのも何なので、特に理由は無いのだが望来の海に寄り道する。
数ヵ月後には海水浴客で賑わう海岸も、この季節は殺風景だ。

恵庭の方は、日常生活のにおいて殆ど海を見る機会が無いらしく、久々に訪れた海を楽しんでいた。
「いやあ、何かこう言うのって大学生らしいですね」
「AAAさん、いつもこういう事してるんですか?素晴らしいです」

どういう根拠でそう思ったのか知らないが、喜んで頂けたのならまあ良しとしようか。


石狩へ戻った後、車を手稲方面へと進める。
石狩と手稲が近い事に驚いたようだったが、昔の私もそうだった。

手稲駅へと向かって走っていると、突如
「ここから道工大って近いですか?」
と尋ねられる。すぐ傍だと答えるに
「ちょっと見てみたいので、寄って行ってくれませんか?」
と。またまた面白い方向に興味を持つ人だね。
私も寄り道は大好きなので彼らの要求を承諾し、北海道工業大学へ転進。
(ちなみに実は本日、北海道工業大学の開学記念日だったりする。休みは明日らしい)


北海学園と比べると広大なキャンパスを見て、感嘆の声を上げる2人。
各施設を見て、うちの大学にもこんな広々とした施設が欲しいとしきりに言っていた。

彼らの希望によりそのまま学内を闊歩してみる。学食や図書館などを訪れた。
図書館には工学系の書籍がいっぱいあるのが羨ましいが、
さらにさらに、資格試験関連書籍が置かれた部屋があるようなので入ってみようか。


こ、こんなに資格試験の本がある!素晴らしい!!今度また来よう!
我が大学にもこれくらいあれば資格試験の情報収集が楽なのに。
本の購入を希望したら図書館に入れてくれるかな?



彼らは他大学見学が事の外気に入ったようで、
「いいですね、別の大学を訪れるのも」
「札大とか札学とか、他の大学も行ってみたいね」
「そうそう、藤の花川校舎とかもね」
との事。大学巡りをしたがるあたりは、私と同じような風を感じる。

「藤女子大学の花川校舎だったら、毎年大学祭(藤花祭)に足を運んでいるなあ」
とふと呟いたら、
「え?毎年ですか?どうしてですか?」
「はあ、さては彼女が藤女子に居るんですね?」
「藤女子か、いいなあ。俺も言ってみたい」

ヴッ、そういうわけでは・・・・・・。うーん・・・・・・。
いや、私が余計な事を言ったのが悪いのだが・・・・・・。




その後、小樽の方を手稲駅にて、恵庭の方を新札幌駅にて降ろし、帰路に着く。
「恵庭まで送ってくれてもいいっすよ」
と言われても、流石に恵庭までは行きませんよ。
もしこれが女の子で、かつ好みの子だったら行くかもしれないけど。もちろん、あえて一般道経由で。
・・・・・・ええ、またいつもの妄想です。



ともかくいろいろ良く分からない日程であった。
この前の小幌行きのメンバーと良い、ここ最近イレギュラーな組合せでの行程が多いな。
それもまたそれで楽しいからいいけどね。



最後に数時間連れまわした後の新入生に対する印象・感想でも。

殆ど面識がない私と一緒にホイホイついてくると言う点にちょっと危なさを感じはしたが、
話をしてみると、昨年のゼミで対峙したようなただの馬鹿ではないようであり、少し安心した。
サークルに対して求めるものをそれと無く聞いてみると
“部室で馴れ合ったり、飲み会ばかりやったりするサークル”よりも
“きちんとその目的に沿って活動し、研鑽するサークル”の方が良いということだし、
写真についてもきちんとやっていきたいという心意気が感じられた。
どうやら、ただ飲み会がしたいとか女目当てとかで入ったわけではなさそうではある。
もっとも私は疑い深い人間なので、
“こういった受け答えをすれば、私の印象がよくなる”事を察した上での発言の可能性をも考えてしまう。
(実際、新入生歓迎会でそういう人いたからな)
まあ、言葉を飾る事は出来ても、行動は飾れないわけであり、
これからの彼らの活動を注意深く観察してみようと思う。



さて、皐月16日の撮影会が色々な意味で楽しみだな、こりゃ。