2007/4/13 卯月十三日




さて、昨日から本日にかけて、外貨証拠金取引で利益を上げたのにも関わらず、
税金を支払わずして摘発された人のニュースがありました。

私も外貨証拠金取引をメインの運用先にしている以上、無縁ではないと思ったので、
ちょっとこの記事について少し掘り下げてみたいと思います。 

外貨証拠金取引、これは外国為替、例えばUSドルやEUユーロなどと言った通貨を売買し、
その為替レートの値動きや、各国の金利の差を利用して利益を上げる事ができると言う、
最近人気の投資商品です。(って、記事にも書いてありますね) 
外貨証拠金取引はFXとも言います。(正確には少し意味が異なるのですが)
よってこの日記内では、以降外貨証拠金取引のことをFXと呼びます。 

FXの大きな特徴としては、『レバレッジ効果』を使う事に 
より証拠金(取引会社に担保として預けたお金)の何倍もの取引ができる事です。
例えば10万円を元手にして、1000万円分のドルを購入する事も可能です。
この場合、1円の為替変動で10万円が倍になったり0になったりします。
(正確にはマージンカットと言って、お金が0になる前に自動的に取引が打ち切られるので、
 0になる前に取引停止になります) 

また、もう一つの特徴としては、証拠金取引なので、『手元に無いものを売れる』事です。
例えば取引会社に『日本円』しか預けていなくても、ドル売り/円買いをする事ができます。
預けているお金はあくまで担保なので、その信用で手元にない通貨を空売りできるのです。
また同様に、ユーロ売り/ニュージーランドドル買いのような、日本円を全く介しない取引も可能です。 

FXは良く、非常にハイリスクハイリターンの取引だと言われますが、
これは『レバレッジ効果』をどれだけ使うかによって調整できるリスクであり、
『レバレッジ効果』を使わなければ、ローリスクローリターンな取引も可能です。
つまり非常に自由度が高い商品であるがゆえに、
投資家が望めば、もしくは望んでいないとしてもその誤信ゆえに超ハイリスクな取引をできてしまうのが、
この投資法が怖いと言われる所以でしょう。 

さてFXの説明はここら辺にして、記事の中に出てきた4億円を無申告の主婦の話に移りましょうか。 

前述したように、FXにおいては『レバレッジ効果』をうまく使えば、
資金を10倍にする可能性を持たせるのは難しい事ではありません。
可能性を持たせる、と言う言い方に留めたのは、
誰でもが資金を10倍にできる魔法の投資だという誤った認識を抱くのを防止するためです。
実際FXによって数百万円、数千万円の資金を殆ど失ってしまった人も山ほどいます。 

この記事からでは、この主婦が凄腕であり、何らかの投資手法を確立した上で利益を出したのか、
それともただ単に運が良かっただけなのかはわかりませんが、
ともかく4億円の利益を上げた事は確かなようで、国民の義務である納税を行ったのはいただけません。 

しかしこの記事の最後にもありますが、
現在の税制は、正直投資家がきちんと確定申告するには少々複雑かつ不利な事情があります。 

FXで生じた収益は、現在の税制上では雑所得に分類されます。 

雑所得と言うのは、所得税法が定める他の9種類の所得、
すなわち利子所得、配当所得、事業所得、不動産所得、給与所得、退職所得、譲渡所得、山林所得、一時所得の
いずれにも当てはまらない所得の事を言います。 

さて、以下が雑所得の税率です。 

・200万円以下      15% 
・200万円超330万円以下  20% 
・330万円超700万円以下  30% 
・700万円超900万円以下  33% 
・900万円超1800万円以下  43% 
・1800万円超       50% 

この記事の主婦の場合、最高税率50%が賦課されるわけですね。
1800万円超の利益が出ると、国に利益の半分がもっていかれます。 

これは、株式の譲渡に関わる利益の税率が、どんなに巨額になろうが20%
(平成19年までは優遇措置により10%)なのに比べて非常に不利です。 

FXにおいても、20%という税率で取引する方法が一応はあります。
『くりっく365』という取引所取引を行った場合、税率は一律20%です。
ただ、この『くりっく365』は、通貨ペアがクロス円(ユーロ円とかポンド円とか、円が絡む取引)しかない、
取引手数料が高い、などいろいろな制約や不便があるため、
大半のFX投資家は『くりっく365』ではなく、相対取引の業者を利用しています。 

まあこちらは、税率が高くたってそれだけ儲かっているのだから払えないわけじゃないでしょ?と言われるかもしれませんが、
今の税制が残酷だと思うのは、株で大損してFXで大勝した場合、もしくはその逆の場合です。
つまり、申告分離課税である株式譲渡損益と、雑所得であるFXの損益は通算できないので、
たいした利益が出ていない、もしくは全体で損失が出ていても、
税金を支払わないとならないと言うおかしな事態が生じてしまいます。 

また今年は大損したが翌年は大勝した場合、またその逆においても不都合が生じます。
株式の場合ならば、損失を翌年度に繰り越せるため、こういったときにそれほど問題になる事はないのですが、
雑所得においては、損失の年度通算ができません。
よって例えば、1000万円で投資を始めて、その年は500万円のマイナス、翌年は500万円のプラスで、
結果±0になったとしても、500万円の利益に係る税金を支払わないとなりません。 

税金を払わないのは論外ですが、投資家がきちんと税金を支払いやすくするためにも、
こう言った所を何とかして欲しいと切に思います。



と、以上の内容を美櫛(美糞と言う表現は酷いだろう、とお叱りを受けたので、美櫛に変更することにします)の
日記に書いたのですが、その元となった記事がこちら。

--------------------以下、新聞記事より引用--------------------

外為証拠金取引、4億円を主婦無申告…脱税容疑で告発

 個人投資家向けの金融商品「外国為替証拠金取引」(FX)で
2005年までの3年間に得た約4億円を税務申告せず、所得税計約1億3000万円を免れたとして、
東京都内の主婦が東京国税局から所得税法違反(脱税)の疑いで東京地検に告発されていたことが分かった。

 外為証拠金取引は少ない資金で多額の利益が期待でき、投資家の人気を集めている反面、
税務申告しないケースが目立っているが、脱税が明るみに出たのは初めて。

 告発されたのは、東京都世田谷区の主婦池辺雪子氏(59)。

 関係者によると、主婦は自分と夫の名義で口座を開設、
複数の先物取引会社を通じて商品先物取引や外為証拠金取引を行い、主に外為証拠金取引による所得を隠していた。
数年前、親から財産を相続し、数千万円の運用資金があったという。親は千葉県内の開業医だった。

--------------------引用おわり--------------------

とまあ、FXで税金を払わないケースが後を絶たないようですが、
私も今年、このままのペースで利益を積み上げていくと、課税対象にかかってしまうかもしれません。

まあ、もし利益が上がったとしてもせいぜい数十万円、百万円に到達することはまず無いでしょうから
たとえ税金を払うことになっても、たいした金額にはならないと思いますがね。



普段は美櫛とこちらでは、異なったネタを扱おうと思っていましたが
ついあちらで長い文章を書いてしまったので、今日はこちらでも使います。

基本的には速報と詳報の関係や、要約と詳細の関係などにしようとは思っているのですがね。