2006/12/20 師走二十日




今日もまた、札幌から2つのバス路線が消える。
厳密には“札幌から”という表現が正しいかどうかはわからないが。

今日を持って運行が終了される2路線は、系統[150]及び系統[151]のイオン緑苑台線。
共に、石狩市にあるイオン緑苑台SCとへのアクセス路線であり、
[150]は石狩市の『花川南9条3』と『イオン緑苑台SC』を、
[151]は札幌市の『篠路10条4』と『イオン緑苑台SC』を結ぶ路線だ。


私は今まで、これらの路線を利用したことはないが
今日で最後と言うことで、例のごとく乗り収めに向かう。
もう明日からは、いくら乗車したくても乗れないわけだからね。

まずは[150]に乗って『イオン緑苑台SC』に向かおう。
しかし[150]の出発地である『花川南9条3』と言う場所は、ターミナルがあるわけではなく
石狩市花川南の住宅街のはずれであり、アクセスしやすい場所ではない。

よってまずは地下鉄で麻生駅へ向かった後、バスに乗り継いで花川南を目指す。
[麻13]に乗って新琴似4番通をひたすら北西へいけば、『花川南9条3』のバス停に着く。
しかし私は、その2つ手前のバス停、『4番第8横線』のバス停で降りる。


『4番第8横線』は、前に藤女子大学花川キャンパスに行ったときに出てきた
『屯田3番西』と同じく札幌市内最後のバス停であり、
ここを過ぎると料金が40円上がるのと同時に、地下鉄との乗継割引が効かなくなる。
これの次のバス停は『石狩南高校前』だが、このせいか
わざわざバス停1つ分歩く高校生が少なからずいるようだ。


ところでこのバス停名の『4番第8横線』だが、札幌市内にしては変わった名称である。
このバス停が存在する場所は新琴似町であり、条丁目の表記はないので、条丁目での区分はできない。
よって、新琴似4番通と新琴似第8横線が交わる場所にあると言うことで、『4番第8横線』の名がついたのだ。
この1つ前のバス停は『4番第7横線』、さらにもう1つ前のバス停は『4番第6横線』である。


ちなみにこれが新琴似第8横線である。あまり大きな通りではない。

----------------ここからはさらにマニアックなお話----------------

新琴似界隈を歩いていると、○番通や第○横線という言葉をよく見聞きします。
もともと新琴似は、明治20年頃、琴似、山鼻についで
札幌で三番目に屯田兵が入植した地域であり、その歴史は屯田兵なしに語れませんが、
この○番通や第○横線も、屯田兵が入植するに当たり、
開拓する土地を与える際に行った区画割りに由来するものです。
そういった理由で、新琴似の町は100年以上前から碁盤の目の構造になっており
新琴似○条○丁目という住所が設定された今でも、
○番第○横線という呼称は、地域の中で使われているのです。

これらの名称がついた通りの中でも特に新琴似4番通は、石狩方面への大動脈で、
朝の通勤時間には毎時30本のバスが駆け抜けます。
また道の両側にはたくさんの店舗が並ぶ賑やかな通りでもあります。


この地図は新琴似地区とその周辺のものです。
もっとも細い線は新琴似○番通を示していて、
赤、橙、黄、緑、水色、青の順に、新琴似1番通から新琴似6番通です。
少し太い線は第○横線を表しており、
赤、橙、黄、緑、水色、青、紫、桃色の順に、新琴似第1横線から新琴似第8横線です。
等間隔に区画されているのがお分かりいただけるでしょうか?

さて、先ほどから私は“新琴似”○番通、
もしくは“新琴似”第○横線という言い方をしていますがこれにも理由があります。

実は新琴似と隣接する屯田地区にも、○番通や第○横線があるのですね。
これらはまったく別物で、たとえば屯田4番通といえば
地図の上のほうにある、太い赤線と青線が通っている通りです。

さらにややこしいのは、新琴似と屯田を貫く道路(横線)であり、
たとえば新琴似第3横線を北上すると屯田に入るわけですが、
この道路、屯田では屯田第2横線なのです。なので、接頭語をつけないと話が混乱します。

もっとも一般には、接頭語なしで○番通、第○横線と言った場合には、新琴似の方を指すようです。
バス停の名前でも、新琴似4番通にあるバス停はただ単に『4番第8横線』となっていますが
屯田3番通の札幌市と石狩市の境界付近にあるバス停は『屯田3番西』となっています。

最後に余談ですが、国道231号線を北上するバスに乗ると、
北二番橋、北三番橋といったバス停名を耳にします。
これらは全て橋の名前ですが、全て屯田○番通と対比しています。
たとえば北四番橋を通るのは、屯田4番通といった具合ですね。

普段何気なく聞き流すバス停名も、その由来を知っていると面白いと思いませんか?

----------------  マニアックなお話  終わり ----------------


4番第8横線から北西へ歩く。
程なくして石狩市へ入り、『石狩南高校前』のバス停付近では少し街らしさが戻ってくる。
さらに歩き、札幌市との境から約1kmと言うところに、『花川南9条3』のバス停がある。


[150]は、バス停の少し後ろで、静かに出発の時を待っていた。

向かい側のバス停には、石狩南高校の生徒と思われる生徒が数人やってきた。
おそらく手稲方面へと向かうのだろう。


程なくして[150]の発車時刻になる。私は例により先頭の座席を確保。
乗客は私だけで、例のごとく運転士が話しかけてきた。

花川南、そして花川北の住宅街を貫いてバスは走る。
最後まで一人旅かと思いきや、途中で何人かの乗客があった。
イオンまで行く人の他に、途中のジョイフルエーケー及びイトーヨーカ堂へと
買い物しに行く人の利用もあるようだ。


紅南小学校を過ぎ、発寒川を渡ればそこは札幌市屯田。
屯田の新興住宅地を抜けて、ジョイフルエーケーの裏手を通り左折、屯田の端を突き抜け、再び石狩市へ。
石狩市を出発し、一旦札幌市を経て、再び石狩市に入る路線と言うのはかなり珍しい。

ちなみに今日は、前回の乗りバスのときと異なり、一日乗車券を使っていない。
これら[150][151]のバスは石狩市内を通るため、共通1Dayカードの効力範囲外であり、
一日乗車券を使ってもほとんど恩恵を受けられないからだ。

よって今日利用するのは買物回数券。
10時から16時に下車する時に限るが、
2000円で2500円分利用できるという割引率20%のお得な回数券だ。


札幌市最後の『屯田10条3』のバス停を越えると、少しバス停の距離があく。
向こうに見えてくるのはイオン緑苑台SC、そしてこのバスの終点でもある。
帰りのバスが来るまでの間、ちょっと買い物でもしようか。(目的と過程が普通の人と逆です)


この時間の店内は主婦ばかりで、私のような人種が店内を徘徊しているのが不自然だ。
とりあえず所持金が320円しかないが、何とか昼飯タイム。
(バスカードの類は大量に持っているから、帰りのバス代が無くなるということはないのだ)


帰りは『篠路10条4』行きの[151]を利用する。
こちらは『イオン緑苑台SC』を出てから途中までは新琴似通、すなわち[150]と一緒の経路を通り、
屯田4番通で左折、学田通を経由しつつ、東8丁目篠路通を北上して終点『篠路10条4』へと向かうルート。
文字でわかる人はなかなか札幌通だね。文字ではわからないけどルートを知りたい人は先ほどの地図をどうぞ。
地図の上のほうにある太い線は、赤が[150]、青が[151]の経路で、紫は重複部分である。


イトーヨーカドーから先、学田通を通る経路、屯田から太平へと横断するルートだ。
他のほとんどのバスが、石狩街道を中心に南北に貫く経路をとるため、
東西方向に移動するこのバスは貴重なのか、意外と屯田から乗ってきて篠路で降りる乗客がいる。
これらの人たちは、明日になったら同じ経路を歩くのかなぁ?

バスは篠路の商店街で少しずつ乗客を降ろし、
終点『篠路10条4』へと到着する頃にはすでに私一人になっていた。


終点に着いたバスはどこかへと走り去っていく。
ここには前も来たことがあるが、特に何かがある場所でもないので
すぐさまやってきた[22]系統、札幌ターミナル行のバスに乗ってきた道を戻る。
やはりこの系統は乗客も多く、座るのが精一杯だ。
しばらくしてバスは静かに札幌駅前へと到着。今日の行程もこれにて終了だ。


さて、先月、今月と立て続けにバス路線が消えたが、
次は来年の3月末に、旧市営路線である[南92]の廃止が控えている。
この路線もまた、非常に面白い路線なんだがな、残念だ。

廃止が決まる前に利用したいとは思うものの、なかなか実行するのは難しいのである。



尚、今日の廃止で『イオン緑苑台SC』を経由するバスが全て淘汰されたわけではない。
『地下鉄麻生駅』から『イオン緑苑台SC』を経て『石狩庁舎前』へと向かう[麻08]は残る。

しかし[150]や[151]が運行していた地域の人たちが、[麻08]を利用してイオン緑苑台SCへと行こうとすれば、
花川南からなら『石狩庁舎前』もしくは『新琴似8条6』乗換え、
篠路からだと『地下鉄麻生駅前』乗換えを強いられる。
そんなことをするくらいなら、間違いなく買い物客は麻生から地下鉄で札幌都心を目指すだろう。

距離的には近くても、自家用車利用でなければすこぶる不便な公害型ショッピングセンター(誤字じゃないよ)、
高齢者が増えていくこれからを考えると、時代錯誤ではないかと思う。

[150]と[151]の廃止は、わざわざバスでここに来ようという人は少数派だったと言うことを意味する。
自家用車利用者にはよくても、公共交通利用者がわざわざ行きたい場所ではないと言うことだ。

札幌はまだいい。と言うか恵まれている。
わざわざこんなところを目指さなくても、駅前や都心方面が元気だからな。180万都市は伊達じゃない。
公害型ショッピングセンターに破壊された地方都市の中心部は見るも無残だ。

わざわざ公共交通利用するのは面倒くさい、
都心部は駐車場が確保できないし道路が混雑するから嫌だ、
こうして曲がった便利さを求めた結果が公害型ショッピングセンターだが、
果たしてこれらの登場の結果、便利になっただろうか?
自家用車がないと生活するのが困難な、不毛の都市を作り上げただけではないか。

ただ最近では、社会も公害型ショッピングセンターの都市破壊力を警戒する方向に傾いてきている。
都市破壊の影響が目に見える形で現れてきたからだ。
世論が現状を選ぶのか、秩序ある街づくりを選ぶのかはわからないが、
私としては、街はやはり車がなくとも生活できるのでなければ、お話にならないと考える。