2006/10/8 神無月八七日




北海学園の祭り2日目は、昨日より少し天候は回復した物の
芳しくない事には変わりなく、相変わらず人出が少なめ。
JAZZコンサートやチアリーディングなどの一部の予定も中止になり、
校内を行脚しつつ、適当に撮影するくらいしかやることがない。
noct-氏は、あまりにも暇なのでさっさと帰ってしまった。
クロサワ氏は祭りを満喫しているようだけど。

しかし北海学園の大学祭って、なかなか写真を撮影しづらいのだ。
狭い通路に人が犇いているのが原因なのだが、
北大祭や札大祭など、他の大学のお祭りの方がいい絵が撮りやすいと思う。

しかし祭りって、意外と書く事ないですね。
と言う事で、こういう人が入り乱れた空間での人の撮影についてでも述べてみるか。


私の写真において人物を撮るときの大きな特徴は、私自身において表情に介入せず
あくまでそこにある表情をスキャルピングする事だ。

写真において演出は必要か?と言う議論で対立する事柄でもあるが、
私の考え方としては、私自身が無理して笑顔を作るよりも、
友達などといる時の自然な笑顔をスキャルピングした方が自然な表情が撮れる、である。


ちなみに『スキャルピング』と言う言葉はもともと相場用語である。
デイトレーダーが僅かな値幅を狙って超短期的に売買して利益を得る手法をの事を指すが、
数pipsの僅かな利益を市場から頂くのを、皮を薄く剥ぎ取る行為に准えているのだ。
だったら、“人間の一瞬の表情をカメラによって剥ぎ取る”という事で、
なんとなくこの言葉が適切かな、と思って私は使っている。(多分他に使っている人はいないと思う)


本来このような撮り方には、『スナップ』というちゃんとした名称がある。

大辞泉によれば
「人物などの被写体を、自然な形や雰囲気の中で早撮りした写真」   
大辞林によれば
「自然な表情・姿態・雰囲気を表現するため、人物などの瞬間的な動作をすばやく写すこと。早撮り写真」
であり、私がやっていることそのものなのだが、
今では『スナップ写真』という言葉の意味が一人歩きしてしまっているので
『スナップ』と言っても話が通じない事がある。

このやり方をするに当たっては、コミュニケーション能力が必要ない代わりに
状況に応じて瞬時にシャッタースピードや絞り、ISOなどを決める判断力と
絵になりそうな瞬間を敏感にかぎ分ける洞察力、
さらには周囲の目を気にしない度胸及びそれを担保する危機回避能力が必要だ。

クロサワ氏が私の撮影する様子を見て
「よくそんな状況で平然とシャッター切れるな」
と言っていたが、私も昔からそれが出来たわけではない。
高校時代に学校内でデジカメを持ち歩き、街の中でカメラを振り翳し、
人の目に晒されつつも怯まないで撮影する訓練を積み重ねてきた結果である。
最も大きな要因は、私自身が常識外れな人間だった事かもしれないけどな。

どこでも躊躇無くシャッターが切れるようになれば、後は感性の問題。
うまく絵になりそうな瞬間を切り取るのにもコツはあるが、場数を踏めば習得できる。



と言う事で学校祭においてあちこちでスキャルピング撮影して歩いていたが
どうも面白くないと言う事で、茶道部のお茶会にでも突撃して、その様子を撮影する事にする。


お茶会に参加するには受付に名前を書く事になっているようだ。
何でもいいから書いてくれと言われたので『∀』にした。
『AAAAAAAAAA』と書くのは流石に面倒だったので。(まともに書けよ)


他の人はお茶を点てる様子を座って眺めているのですが、撮影する私だけは茶室内で動き回っています。
毎回なんとなく違和感を感じるのですが、座っていては撮れませんので。


お茶とお茶菓子が出されます。茶碗をとカメラを交互に持ちながらと言うのもカメラマンならではです。



さて、お茶も堪能したのでそろそろ帰ろうかと思ったら、
業者の方から、集合写真の撮影もそっちでやってくれ、と頼まれた。

アルバム掲載用の集合写真を私が撮るのですか。
ああ、普段の私の撮影方法に、私自身が笑顔を作り出すという手法が無いから
こういった集合写真の撮影には弱いのに・・・・・・。


たくま氏、クロサワ氏と協力して何とか場を作り、撮影する。






こんなところに集合写真なんて掲載していいのか知らんが、まあ御覧のような出来である。
(まあ、苦情が出たらモザイクかけるなり削除するなりすればいいか。)

みんなとても表情が硬い。
普段見ている集合写真は、笑顔の写真が普通なので、それが当たり前だと思っていたのだが
実際にやってみると、結構難しい。と言うか、いざやるとなると、どうすればいい表情を引き出せるのかわからん。

結局、業者の方からは
「まあ、こんなもんじゃない?OKOK」
と言われ、及第点は貰ったものの、
その出来は、茶道部の方々がその前に見せてくれた表情を知っている身としては、やはり少し残念である。
私の技量不足が集合写真の出来に反映されてしまうのも不本意だしね。


何か悔しいので、後から、業者の方が、別のサークルの集合写真を撮影をする様子を見させてもらった。
やっぱりプロはうまい。いい表情が出ていないと見るや、
すかさず絶妙な掛け合いで、いい方向に誘導していく。

業者の方曰く、
「『団結力』とか『一体感』とか、そういう事を言えば結構いい感じの表情得られるよ」
と言う事らしいが、やっぱりケースバイケースだよな。

そういえば以前、高校生の集合写真を撮る際に、「1たす1は?」
の代わりに、「エックス二乗の微分は?」と言って笑顔を作ったことがあるが
これも使う場面を間違えたら、何の効果も無い。
とある進学校の特進クラスの人達だったから、これでみんな笑ったわけで
もしこれを底辺クラスの高校生にやったとしても無駄だろう。
笑顔を作り出すにはやはり機転が必要なのである。

次に集合写真撮る機会があったときに困らないように、
もう少しコミュニケーション能力を高めておこう。
「奪う撮影」だけじゃなく「与える撮影」もできたほうが幅が広がるしね。
(上級者は私が知っている限りでは、両方とも可能である)








最後にこれは余談になるが、撮影の際に私がいろいろ話した女性、
おそらく茶道部の部長さんだと思うが、私のストライクゾーンど真ん中で
久々に、何というか、トキメキみたいなものが体内を駆け抜けた。

最近では和服が似合う日本人も少なくなってきてしまったが、
彼女はとても和服が似合う女性で、さらには言葉遣いや仕草も淑やかで
古き良き時代の大和撫子に通じる美しさが感じられた。

もしここに来た理由が仕事での撮影ではなく、プライベートなら
是非ともお近づきになりたかったが、仕事は仕事、
そういった感情は押し殺して撮影に専念した。

こんな事は、ここの日記でしか書いたり言ったりする事は無いだろうし、
だから何をすると言うわけではないが、
うちの大学にもああいう人がいるんだなと思うと、これからの撮影が楽しみになった。


以上余談終わり。いつかここでこんな事を書いた事を後悔しそうな気がする。