2006/10/4 神無月四日



本日の外国為替市場は、コモディティ価格の全面的な下落により
コモディティ通貨であるオージーやキャンドル、ランドなどが連れ安となりました。
オージーは指標を今朝方の良指標を受けて小幅な下落にとどまっていますが
経済基盤が不安定である南アランドについては下落が顕著であり
EUR/ZARのレートは10.00を超え、ZAR/JPYは15.00を割りました。


まあこんな事はどうでもいい。市況・為替ネタはblogに分離したのだ。
どうしても意味を知りたい人は

コモディティ    ここでは金属や原油などの鉱業資源の事を指す

コモディティ通貨  鉱業資源価格に連動しやすい通貨のこと。鉱業資源の大産出国の通貨に多い。
          何故そうなるかと言えば、鉱業資源が重要な輸出物となっている事が多いので、
          資源価格の変動が、必然的に貿易収支や経済成長に影響を及ぼすから。

オージー      オーストラリアドルの愛称。高金利なので日本の投資家にも人気が高い。
          なお、この通貨は金価格に引っ張られやすい。

キャンドル     カナダドルの簡易呼称。ちなみにキャンドルと言えばカナダドルの事を指すが
          ドルキャンというと、USD/CADの通貨ペアの事になるので注意。
          なお、この通貨は原油価格に引っ張られやすい。

ランド       南アフリカ共和国の通貨名。高金利だが為替変動が大きく、リスクが高い。
          なお、この通貨は金価格に引っ張られやすい。

指標        ここでは各国が発表する経済指標のこと。
          為替相場に影響する経済指標は、貿易収支や政策金利などをはじめ
          失業率、小売売上高、住宅販売数など様々な物がある。

○○○/×××   ○○○及び×××には通貨コードが入る。
          1○○○あたり何×××に換算できるかを表す。
          つまりEUR/ZAR=10.0なら、1ユーロ=10ランド、
          ZAR/JPY=15.00なら1ランド=15円と言う事になる。

でも見つつ補完してくれ。



まあ、今日の日記はそんなことを語りたいのではないのだ。
一昨日、昨日と、例え話を用いてとある事象に対する警鐘を鳴らしていたので、
今回はそのことに対する顛末及び私の見解を、相場の話を用いて語りたいと思う。


株の世界でも、為替の世界でも、商品先物の世界でも、
安く買って高く売る、だけが儲ける方法ではない。
先に高く売って、安く買い戻してもいいのだ。

手元に無い物をどうやって売るのかと思うだろうが、
株では信用取引で、為替では証拠金取引によるショートポジション構築で、
商品先物ではその制度上必然的に、手元にないものを売る(空売り)事が出来る。
「なぜ空売りが可能か」の説明は今回は省かせていただく。、

投資家はどういったときに空売り(ショート)するか?
答えは簡単で、買いたい時の逆だ。

投資家があるものを買いたいと思うとき、それは値上がりが期待できるときだ。
値上がりが期待できる時というのをもう少し詳しく分析してみると
その会社(為替なら国、商品先物なら商品、以下省略)の先行きが良好だと思われるとき、
その会社の将来性が期待できるときである
その会社が信頼できる、応援している時とも言い換えられるだろう。

と言う事は、空売りを仕掛ける時は
その会社の先行きが芳しくない時、信頼できない時である。
そして原理的にはその会社の業績が悪くなれば悪くなるほど儲かる。
まさに「人の不幸は蜜の味」と言うわけだ。
(商品先物の場合は、豊作のときに儲かるけどな)


ではここからは、投資家がショートで儲ける時の相場の流れを説明する。
私は株や商品先物より、為替の取引が圧倒的に多いので、為替を例にする。


為替の場合は、株や商品とは違い、必ずロング(買い)とショート(売り)は表裏一体である。
取引が「ある通貨を売って、その対価である通貨を買う」という流れになるからだ。
つまり以降の先行きが期待できない通貨を売って、
先行きが期待できる通貨を購入するわけだ。

為替の場合、通貨ペアのレートは、あくまでも2通貨間の相対的な交換レートを示すので
例えば1ドル=110円から1ドル=120円になったからと言って
必ずしも絶対的にドルが強いわけでもないし、絶対的に円が弱いわけでもない。
ただ、ドルに対して円が弱いだけだ。まあ、そこら辺の説明をやると
今回私が言いたいことが十分伝わらなくなる可能性があるので、割愛させていただく。


話を単純にするため、通貨ペア間での話に限定しようか。
想像するのはドル円でもドルスイスでもユーロポンドでもいい。

相場の流れにはレンジとトレンドの2つがある。
レンジはある一定のレートの間をうろつく相場、
トレンドは値を細かく上下させながらも、大きな流れでは上か下へ向かっている相場である。

投資家がショートを仕掛ける絶好のチャンスは、
大きな流れで相場が下へ向かっている状態、つまり下降トレンドの状態である。
相場が下降トレンドに入ったと見るや、順張りを得意とする投資家は
ショート(売り)ポジションを構築する。

実際の取引では、下落トレンドへの転換がわかれば苦労しないが、
うまい具合に投資家が予想した方向へ相場が進んだとしよう。
ショートを仕掛けた投資家は、増えていく含み益にニンマリ。
この行為を、「通貨の下落に加担し、不当にその通貨を蹂躙している」などと煽る輩もいるが
下がると思う通貨をショートするのは投資家として当然の行為であり、
そんな煽りを真に受ける奴は殆どいない。

さらに相場が下落していくと、下落相場をただ眺めてみていた投資家が新たにショートしたり、
また、今までロング(買い)ポジションだった投資家の損きり、
もしくは途転による売り注文が殺到し、相場の下落は加速する。
売りが売りを呼ぶ状態である。(ショートスクイーズ)

「○○をショートしておけばアホでも儲かった」
後からチャートを見た人がこう揶揄する相場である。
2005年9月〜12月上旬の日本円、2006年3月のオージー及びキウイ、
2006年4月後半〜5月の米ドルなど、意外とこういう例は度々ある。

ただ、みんなから売りを浴びせられた通貨が、延々と値を下げていくかと言えば、そうではない。
割安になる事により買おうとする人が出てくる事もそうならない理由のひとつであるが、
ショートで利益を得ようとした人は、必ず何処かでそのショートポジションを
買戻し決済しなければならないからだ。
この買戻しによる買い圧力(ショートカバー)があるため、
たいていの場合下落はどこかで止まる。

賢い投資家は、出来るだけ早めにショートを仕掛け、
ショートカバーが始まる頃には既にショートポジションを手仕舞いしている。
つまり、素早く仕掛けて素早く手仕舞う、順張りの場合はこれが優秀な投資家である。

逆に下手糞な投資家は、売りが売りを誘う相場でロングを塩漬けにし、
相場が下がる過程で大幅な含み損を抱える。そしてついに耐え切れなくなって損きり、
または今までの損を取り返そうと途転、そしてそこが相場の底だ。
(キウイの時は私が見事にそれだった)

つまりショート(空売り)は早めに、そして時期を見計らって素早く撤退する事が大事と言う事だ。
相場では一度大火傷をしたが、その反省を次に生かしたい物である。


一方、投資家側ではなく、ショートカバーが一巡した相場の方に目をやると
一旦は底を構築し、少し値を戻した状態になる。
ここから先にその通貨がどうなるかは、2つの道筋がある。
1つは反発し、下降トレンドを終えて上昇トレンドやレンジ相場へと転換する場合、
もう1つはその軽い値戻しはただの押し目に過ぎず、更なる下降トレンドへの序章になる場合だ。
その2つの経過への分岐条件は一概には言えないが、
その通貨のファンダメンタルズ(その国の経済を判断するための基礎的指標)に左右される。
つまりその下落が一過性ならば再び力強く反発するし、そうでなければ再び売られると言う事だ。

私はどちらかと言うと、逆張りによる投資を好む。(リミットエントリー)
だから、小反発はさらなる下落へのエネルギーを蓄えたのではなく
本当のトレンド転換であって欲しいと望む。
無価値になるまで、紙切れになるまでショートの応酬が続く、そんな相場はできれば体験したくない。



相場の世界では「上げ100日、下げ3日」という格言がある。
「下り最速」も同義だが、相場が上がるのはゆっくり確実に行かなければならないが
下がる時はあっという間だと言う事だ。信頼と一緒だね。

相場は意外と、それ以外にも通ずるところがある。
人間が相場を作っているのだから、当然と言えば当然かもしれない。