2006/10/23 神無月二十三日




写真展開催1日前、例のごとく暗室はフル回転だ。
そのフル回転の中に私も入っており、7枚展示予定のモノクロ写真のうち
3枚を本日仕上げなければならない。

モノクロ写真とするのは、国産旅客機YS−11の写真。
デジタルでも結構枚数は撮ったのだが、デジタルカメラの離着陸時使用制限の関係などで、
ここ一番の写真はモノクロフィルムで撮影している。
(私はカラーフィルムを使うのは好きじゃないのだ)

4時間で3枚、慣れた人ならそんなに大変ではないのだろうが、
普段、デジタルばかりであまりモノクロ写真に触れない私にとっては
そこまで余裕のある数値には思えなかった。


モノクロ写真を『創る』ためには、
露光時間や絞り、フィルターの号数などの構成要素を変えつつ、
自分の満足いく仕上がりの写真が焼けるまで地道な再試行を繰り返すわけだが、
引き伸ばし→現像(現像液に浸ける、以下停止、定着についても同じ)→停止→定着と言う過程を何度も行うわけであり、
Photoshopなどの画像編集ソフトで設定を弄くれば
たちどころに結果を反映した画像を吐き出してくれるデジタル画像に比べれば
やはり、たっぷりと時間が必要になる。

また、デジタルにおいては、プリントを介しなくても
ディスプレイにおいて、画像補正の効果を比較する事が出来るが
モノクロ写真の場合、いちいち印画紙に焼き付けなければ、
その変わり映えを目に見ることは出来ない。
デジタルと違って、軽やかに遊ぶことはなかなか出来ない。

もっとも、そのアナログ的な手法の中に楽しみがあるのも事実で、
プリント作業をし始める前はとても面倒くさく感じる私ではあるが、
ひとたび暗室作業に入ると、なんだかんだ言って結構夢中になるのである。

そして、黙々とPCの前でにらめっこのデジタルと違って、
暗室内で他の人と時間と空間を共有できると言う、副次的な要素もある。



ともかくとして、何とか予定時間にはモノクロの作品を仕上げ、
家に帰ってからは、カラーデジタル作品との戦いだ。
戦いと言っても、既に色編集作業などは済ませてあるから、あとは印刷するだけだがな。

が、プリンタの調子が悪く、縦に大量のスジが入った画像ばかり吐き出す。
前にも同じ病にかかったことがあるが、
ヘッドクリーニングをしてもただインクの無駄になるばかりで、非常に困った状況だ。

とりあえず前の経験を踏まえて、空刷り用のダミー光沢紙を用意。
あとはひたすら何度も印刷をかける。
試行を繰り返せば繰り返すほど、紙にのる縦線ノイズは減少していき、
約15枚の空刷りがとノズルチェックが終わった時点で、やっと実用に堪え得る状態となった。

さてやっと本印刷開始、既に作業開始から1時間が経過している。
無駄に潰した光沢紙も馬鹿にならない。
もしかした実際に使用する紙&インク代のコストより、
ウォームアップに使ったコストの方が高いのではないだろうか?

ともかくデジタルの画像を印刷、こちらは計5枚だが、
全ての写真を印刷し終えたところで、PCがオーバーヒートして停止、起動不能に。


おーい、先ほどのモノクロ写真に添付するYS−11の解説テキスト、PCのハードディスクの中にあるんだぞ。
起動できないこの状態でどうしろと言うんだ?

まあ、印刷作業中に停止するよりはましだった。
とりあえずオーバーヒートが原因なら、一夜明けて頭を冷やせば起動できるだろう。


モノクロ写真のプリント中は、印画紙に光を当てるアナログ的な手法が非常にまどろっこしく思えたが、
PCによるデジタル画像の取扱も、実はそれなりに厄介さを内包している事に気づいた。
少なくとも引き伸ばし機は、理由も無くノイズを吐き出したりしないし、
長時間連続使用で臍を曲げる事もないものな。

デジタルが手軽だと言うのは、あくまで軽やかなユーザーにおいてであり、
一工夫しようと思うと、やはり両者ともそれなりの労力が発生するみたいである。