2005/7/3 文月三日 July Third



「高校野球、北海高校が地区予選決勝で勝って北海道大会に出るらしい」
弟がそんなことを言っていたので、高校野球の日程を調べていたら
今日、私の卒業した月寒高校が、地区予選の決勝に出場することがわかった。
試合相手は札幌第一高校、昔の月寒だったらそう簡単に勝てる相手ではなさそう。
11:30試合開始の麻生球場。幸い、今から行っても十分間に合う。
とりあえず、新しいデジカメを手に、麻生へと急いだ。

試合開始少し前に、麻生球場に到着、さて月寒高校側のスタンドに陣取って
撮影しながら応援するぞ、そう思って球場に入ろうとすると、こんな張り紙が貼ってあった。


おいおい、いつの間に撮影禁止になったんだよ。
かといって、絵を全く撮れないのはつまらないし、日記上での表現にも致命的だ。
やっぱり写真の力を借りたい。さて、どうするべきか。

まずは正攻法から行こう。
「すみません、撮影許可をいただきたいのですが」
「えーと、申し訳ありませんが、一般の方に出す性質のものではないんですよ」
あえなく撃沈した。ということは報道関係者専用か。

まあいい、違法にもルール違反にもならない抜け穴を探すのは、私の得意とするところだ。
ここでは、文章をもう一度よく咀嚼してみよう。法解釈のように。

「許可のない者の球場内での写真・ビデオ撮影は禁止です」

つっこむ余地があるのは、後ろの方の部分だな。
『球場内での』
つまり、球場外からなんとかして撮影するなら抵触しない。
そしてどこまでが球場内に該当するか、ということもある。
『写真・ビデオ撮影は』
この部分に突っ込むのは難しそうだけど、
画像の撮影を全面禁止しているわけではないと解釈できなくもない。
勿論解釈すれば、写真・ビデオという画像の代表が禁止なら
それ以外の画像の撮影も禁止であることになるが、
反対解釈すれば、写真やビデオでなければ、画像を撮影するのも可能だということだ。
ただ、写真の定義とは何か、デジタルカメラの動画撮影機能はビデオにあたるのか、
そこら辺を厳密に適用しないとならないので、かなり面倒なことになりそうだ。
ここに突っ込むのはやめておこう。

ということで、なんとか球場外の高いところから、球場の中をめがけて撮影すれば、
撮影禁止の規定に触れることなく、撮影することができる。
いい場所ないかなぁ、そう思って周囲を見渡すと、近くに工場らしき建物が。
あそこの屋上に上れば、きっと中が見渡せるぞ。
が、無断で勝手に人の敷地に入るのは、刑法の住居侵入に引っかかる。よって没。

鉄板などの隙間から撮影するのも考えたが、とてもじゃないがいい絵は撮れない。これも没。

球場に入ることなく、視界を遮られることもない場所・・・・・・一つだけあった。
球場外野のフェンス外の外周部分だ。しかし、そこに上るのは難しそうだ。
が、球場の周りをぐるっと一周すると、なぜか球場の裏側の部分だけ土が盛ってあり、
手を伸ばせば、よじ登れそうな高さだ。
ドラゴンクエスト4の第二章で、壁に薄い部分があって
アリーナ姫がそこを蹴破って外に出られるような、RPG的ご都合主義みたいだが、
まあ、なぜかそうなっていたのだから、利用しない手はない。よいしょっと。


この写真を見れば、私がどこから写真を撮影しているかわかるはず。

おお、これはいい。試合の様子が手に取るように見える。これはいいな、無料だし。
って、入場料を払いたくないから上ったんじゃなかった。写真写真。
スタンドから撮るのとまったく逆になるから、ある意味おもしろいかも。

が、野球場での撮影は、光学12倍では力不足かも。

とりあえず、月寒高校ナイン。小さい。

月寒高校側スタンド。ウォーリーをさがせにもならないな、この倍率では。

第一高校側スタンド。月寒高校側とは撮影する角度を変えてみた。

試合は2回に双方が1点を入れてから、両チームとも0点に抑えていった。
いくつかファインプレーも見られたが、
私の足場が悪く、下手に動くと落っこちかねないので撮影できなかった。その後、
「すみません、そこに登られると危ないので降りてください」
「怪我でもされると、球場の責任となってしまいますので」
巡回していた球場関係者にそう言われ、先ほどの盛り土の部分から降りた。
撮影のことは何も言われなかったので、たぶん球場自体が撮影禁止なわけではないのだろうな。
そもそも張り紙を貼ったのも、高野連だし。

入場料を払わないで試合を見て帰るのも悪いので、
試合はすでに八回裏まで来ているが、500円を支払って入場することにした。

月寒高校側の三塁側スタンドにいくと、たくさんの観客がいた。
もっとも、向こう側から見ていたわけだから、わかっていたことだが。
しかし、カメラ持って盛んに撮影している人や三脚でビデオカメラを回している人が
けっこういることには驚いた。
向こう正面から見ているときも、妙に観客席のあちこちからストロボ発光が見られるのが
気になったが、こういうことだったのか。
許可をもらっているなら、腕章着用等の何らかの識別方法があるはずだろうが
そういったものは持っていないようだし、彼らはどうみても一般客にしか見えない。
では、どうして彼らは公然と撮影しているのだろうか?

そこで考えたのが、ここでの撮影禁止の文言の意味。
裁判所における撮影禁止は、本当に、何人たりとも許可なしに撮影を禁ずるという厳格なもので
法廷内で無許可撮影しよう者なら、そのまま連行されかねないくらい厳しい規定だ。
が、ここでの撮影禁止にはそこまでの意味合いはないのだろう。
あったら彼らは、とっくに連行されているはずだ。
おそらく
「撮影禁止を謳っているけど、ふつうに撮っている分には黙認するよ、
 だけど普通じゃない撮影方法を用いるなど、権利を濫用するような人に対しては
 撮影禁止を楯に、断固たる処置を取らせてもらうよ」
というような意味合いで撮影禁止としているのだと思う。
法律の解釈同様、規則の解釈も難しいな。

八回の裏、札幌第一高校の攻撃、ランナーが出て得点のチャンス。
ここで得点を取られると、月寒高校は苦しくなる。
そこでバットに乾いた音がして、打球が飛んでいく。
野手がすかさずバックホーム、しかしボールが少しそれて、その間にランナーが帰り一点。
第一高校が長い均衡を破った。1アウトで、尚も得点圏にランナーがいる状態が続く。
(表現が曖昧なのは、あんまり印象に残っていないからだ)
が、なんとか後続をゴロとフライに打ち取って、失点を1点で抑える。

月寒高校が残す回は、9回表の1回のみ。
何とか最低でも1点を返して、延長戦に突入したら楽しいな。
観客席も盛り上がってまいりました。

得点するためには、まずは先頭打者が塁に出ることが大事だが、果たしてどうなるか?
ヒットはもちろん、四球でも振逃でもいいから塁に出てくれ。

打った! しかしサードゴ・・・・・・エラー!
三塁手が捕球できなかった。打球の勢いが落ちなかったからトンネルか?
守備側もかなり緊張しているみたいだな。
とりあえずこれでノーアウト一塁、一点差だからたぶん送るのだろう。
二塁までランナーが進めば、チャンスがぐっと広がる。

次の打者は予想通りバントの構え。
高校時代にも言っていたような気がするが、送りバントで「アーチをかけろ」は無いだろ。
相変わらず変わっていないな。

しかしバントはなかなかうまくいかず、
ランナーまでアウトになるところだったが、ぎりぎりセーフ。
2ストライクとなり、3バント失敗を恐れたのか、結局打撃に切り替えた。しかしアウト。

その後の打者もアウトになり、2アウト一塁。後一人のアウトで終わりだ。
次の打者はいったい今、何を考えているのだろう?

打った!右方向。打球はあまり強くないが高いバウンド。ファーストは取れない。
しかし回り込んだセカンドが捕球、これで試合終了か?
と思ったら、ピッチャーのベースカバーが遅れ、ファーストに投げられない。
記録は内野安打になったのか、エラーなのかわからんが、とにかく2アウト一塁二塁。
後から、撮影した動画を見たら、ピッチャーはベースカバーしようともしていなかったけど。
(デジタルカメラはビデオじゃないので、動画撮影だけ解禁しました)

結果として二塁までランナーを進めた。あと一打で同点になる可能性がある。

次の打者に対しては、初球でボール。次の球もボール。ストライクが入らない。
「相手のピッチャーもびびっているぞ、ボールをよく見ていけー」
おっさんが叫んだ。

月寒高校側からすれば、プラス思考なら
「ここでヒットさえ打てば、同点。場合によっては逆転もあり得る」
マイナス思考なら
「これでアウトを取られたら試合終了で負けが確定」
札幌第一高校側から考えれば、前者の場合
「あと一つアウトをとれば勝てる」
後者なら
「ここでヒットを打たれたら負けるかもしれない」

ここでピッチャーがどう考えているかはわからないが、
ボール先行しているということは、ネガティブ思考に陥ったかもな。
ちなみに私の場合は、どちらの立場でも後者の考え方をする。
さて、次の球は・・・・・・

ボール。ノーストライク3ボール。このカウントになったら、そのままフォアボールかも?

ボール。思った通り、結局フォアボール。これでツーアウト満塁。
ツーアウトだから犠牲フライは無いけれど、ワイルドピッチで同点だし、
ヒット一発で逆転できる可能性が高い。
この試合最高の場面がやってきた。この場面だけでも、500円払う価値はあったかも。

第一高校側も、この場面でピッチャーを交代するが、
続けてボール、もひとつボール。やっぱりストライクが入らない?
もしかして押し出し四球で同点もある?

その後はピッチャーも持ち直したのか、ストライク、ファール。これであと一球。
三振とれば試合終了で第一高校の勝利、
が、ヒットなら最低でも同点、場合によっては月寒高校の逆転も十分あり得る。

緊張の一瞬、ピッチャーが投げた球の行方は・・・・・・

スパーン!

ボールはキャッチャーミットに収まり、バットは空を切った。空振り三振。
三塁側スタンドからは、落胆のため息があちこちがあちこちから聞こえたが、
すぐにそれは拍手へと変わった。
「よく頑張った!」
「お疲れ!」
観客席から、労いの言葉が束になって発せられる。
試合終了のサイレンが鳴り響く。彼らにとっては、早すぎる夏の終わりだった。

「来年、頑張って全道大会行ってくれよ」
球場から出てきた選手が、後輩に向かって涙ぐみながら言った台詞だ。
出てきた選手全員、そしてマネージャーも悔し涙を流している。

戦い終えた野球部の皆さん。今まで一生懸命練習してきて、
力を出し切ったからこそ、悔し涙を流せる。そして、また来年に夢を繋げる。

そういえば、私の人生において悔し涙を流したことがあっただろうか?
いや、ない。それ以前に、きちんと努力して力を出し切ったという経験が思い出せない。
自分の努力不足が原因だと分かり切っていて生じた不本意な結果に、
努力できなかった自分が嫌になり、鬱に沈んだことは数え切れないけど。

ちなみに球場外は撮影禁止じゃないので、彼らの一挙手一投足を撮影することができる。
写真的にはとっても絵になる被写体ではあるが、あまり執拗にやりすぎると、
彼らの空間をぶちこわすことになるので、頃合いを見て引き上げる。


涙に濡れる月高ナイン。中には切り替えの早い人もいるようね。

同じく涙に(ry の野球部のマネージャーさん。

もしかすると、北海道大会に行けるのではないか、
私も観戦していて、そんな淡い期待を持っていただけに少し残念だった。
しかし私には悲しんでいる時間などない。とりあえずハーフマラソンを見に行く。
すすきのまで移動して、走ってくる選手を待ち受けるとちょうど良いか。

先導車や白バイが通り過ぎ、最初に走ってきたのは、黒人の選手。
ねらいを定めてカメラを向ける。は、早い!
一瞬で通り過ぎていった。カメラで追いかけても角度がきつくなって
角速度がどんどん大きくなるばかりだ。撮影チャンスはほんの一瞬か。
となれば、こっちも本気出すぞ。
レックビュー解除、シャッタースピード優先モード、ISOを高感度側へシフト。

そんなこんなで、有名無名を問わず、選手の写真を撮りまくっていたわけだが、
よく考えるとこの写真、私はどれが有名でどれが無名なのかわからない。
ここにアップするに至って、プロ選手の写真を選んでしまおうものなら、
パブリシティ権に抵触してしまい、まずい。


なんか一枚にたくさんのランナーが写っているのを適当に選んだけど、
これならたぶん大丈夫だと思う。もしまずいなら、誰か指摘してくれるとありがたい。

さて、すすきのでの撮影はここまでにして、次はゴール少し前の地点、
円山公園駅前まで移動だ。地下鉄駅へ急げ。移動はこちらも全力疾走。
南北線から降りるときに、DQN2名がドアの前を開けずに突っ立っているものだから
その間をこじ開けるように駆け抜けた。
ドアの前を広く開けてお待ちください、というアナウンスは、
人の邪魔にならないように、というマナーの問題でもあるが、
急いでいる人の突進を回避する、という危険を避けるための安全措置でもあると、私は考える。

マラソン選手と地下鉄って、どっちが早いんだろうな。
速度だけを考えれば、当然地下鉄の方が速いだろう。
人間が表定速度35km/h程度で走り続けるのは無理だ。
(100メートルなどの短距離では、わずかに上回っているが)
ただ、地下鉄を利用する場合は、駅まで移動して、地下に降りて、
列車を待って、場合によっては駅を歩いて乗り換えて、地上にあがらなければならない。
東京メトロ銀座線の渋谷駅とか、千代田線の代々木上原駅とか、
札幌市営交通南北線の南平岸以南とかは、上り下りの部分が逆だけど。
このタイムロスを勘案すると、ある程度の距離においては、マラソン選手の方が早くなるようだ。

私はすすきの駅から円山公園駅まで、無駄なく移動したが、
すすきので先ほど見た選手を、円山公園近くで見ることはできなかった。
そして、最終ランナーが来るまでこの地点に陣取っていた。
沿道に立つ観客の数はすすきのに比べて少なかったが、
最後のランナーが来るまで、惜しみない声援を送っていた。

最終ランナーと白バイの人。この距離を完走できるというだけでも凄いと思う。

私は人を応援するというのがとても苦手だ。そして大声を張り上げるのも苦手だ。
高校の球技大会、女子が盛んに応援しているのを見て
どうして彼女らはそこまで応援できるのかと不思議に思ったものだ。
私がそのとき、何をやっていたかというと、やはり写真撮影だった。
もっとも光が少ない体育館の中で、動きが多い被写体に対して、
低感度、低倍率のデジカメを振り翳しても、良い写真は殆ど撮れなかったが。
まあ、、競技など無視して雑談していた中学校の時よりはましか。

そしてここで、512MBのSDメモリカードを使い果たしてしまった。
動画撮影のしすぎだ。しすぎと言っても2、3分程度だが、
それでも512MBを食い尽くすには十分だ。
静止画だけなら、512MBでも十分足りるだろう。
一日に二、三百枚を撮影するのは、鉄道の全駅乗降を実施する際か、
廃線になる前の路線に乗りに行ったときだけだから。
しかし、動画も撮影するなら、大容量のメディアの追加購入を考えた方がいいかもしれない。
(しかし動画を撮影しても、容量が多すぎてWebページに掲載できないけど)

大通で東西線から降りて歩いていると、駆け込み乗車の女の子が私につっこんできた。
さっき私がDQNを吹っ飛ばした事に対する因果応報だろうか?

この後、大学の写真部の飲み会があったわけだが、
ちょっと今日は野球とマラソンでおなかいっぱいだ。
日が変わったところで区切るのもなんだし、
たぶん明日の日記は、たいした内容にならないだろうから、そちらに回すことにする。