2005/7/10 文月十日 July Tenth



本日は電気主任技術者試験が行われる。
私が受験するのは、その区分のうちの伝送交換主任技術者試験。
この試験に合格すれば、弁理士試験や陸上無線技術士の科目免除を得ることができる。
弁理士試験はともかく、陸上無線技術士を攻略する場合は
この試験に合格し、科目免除を得るパターンが必勝法となっている。

とりあえず今日も、3時まで勉強する。
いや、今日も、というよりは、今日は、の方が正しいかもしれない。
この時点での私の自己予想はこちら。

法規 勉強期間1日の割にはなぜか妙な自信 問題文をよく読めばいけるだろう
設備 正直、過去問題はやったが不安 失点をどこまで避けられるか
電力 予備電源・蓄電池などの分野で点を稼いで、半導体等の苦手分野を埋めればなんとか

3時に試験勉強が終了したのは良いが、その後しばらくなぜか眠れなかった。
これが試験に響かなければいいが・・・・・・。

あまり眠れなかったようだが、とりあえず何とか朝が来た。
試験会場はなぜか北海道ハイヤー会館
資格試験で言えば、運行管理者試験と関わりが深い場所だが、変わった試験会場だな。
工事担任者と異なり、受験者があまりいないからだろうか?


9時45分ジャスト、試験会場に到着。

試験会場にいるのはおじさんばかり。女性は一人もいない。
設備系の資格試験は概してこういうパターンだ。
こういう状態で結果の平等を導入しようとしたら大変なことになるよな

尚、専門科目の選択分布は以下の通り。

伝送    21人
無線    21人
交換     5人
データ通信 16人
通信電力  17人

座る座席は専門科目ごとに分かれており、私は真ん中より右より。
線路主任技術者試験の受験者は、19人で、全員が通信線路を専門として選択している。
私が線路を受験するときは、マイナーな水底線路を選んでみたい、
なんて言っている場合じゃないな、とりあえずは今日の試験に集中しよう。
今回で一発合格しないと、次の回に線路を受けることはあり得ない。

程なくして試験問題が配られる。
午前の試験での科目は『法規』、『設備及び設備管理』の二科目。

この試験がやっかいな点は、その出題方法にある。
見た方が早いと思うので、その出題方法を用いて問題を作ってみた。(一応この試験の範囲です)

電池について述べた次の文章は、[ ア ]。

A リチウムイオン電池の公称電圧は約3.7Vである
B ニッケル・カドミウム電池は充電可能な一次電池である 
C 鉛蓄電池は電解液に希硝酸を用いている

選択肢
1.Aのみ正しい  2.Bのみ正しい  3.Cのみ正しい
4.A,Bが正しい 5.A,Cが正しい 6.B,Cが正しい
7.A,B,Cいずれも正しい 8.A,B,Cいずれも正しくない

正誤式の組み合わせだが、消去法が効かない嫌な出題方式である。
この試験の3分の1くらいをこの出題方式が占める。
何の知識も無しにぶつかると、正解率は8分の1である。
一つの選択肢の正誤が判断できれば正解率4分の1に、
二つの選択肢の正誤が判断できれば正解率2分の1にはなるものの
確率の支配を受けることを逃れられない。
文章がA,B,Cの3つの問題はまだいい。A,B,C,Dまである問題もある。
素直に正誤式の1問1点とすれば良いと思うのは私だけだろうか?
工事担任者試験にもこのような出題形式は存在したが、
文章はA,Bの2つが最高であったため、そこまで凶悪ではなかった。

ちなみに、例としてあげた問題の答えは、『1』である。


10時、試験開始が告げられた。まずは前から順に行って法規を解く。
確実に正解だと確信できる問題のみを解答する快速運行。
この段階で解答した法規の問題はせいぜい3分の1。
考える必要がある問題は後からやればいい。

続いて設備及び設備管理の問題。この科目は通信に関して
有線と無線、アナログとデジタル、ハードとソフト、
これらの枠を取り払って実に幅広い分野から出題してくる。
工事担任者試験、無線従事者試験、情報処理技術者試験あたりと重なる部分もあるので
それらを少しは経験している私には少し有利な材料か?

まずは得点しやすい空欄語句補充式の問題から取りかかる。
えーと問1は、イーサネットだ。ひとまずパス。問2は、電池。これはもらった!
問3、シングルスターにダブルスター、どこかで聞いたことがあるな。
そうか、.comMaster試験だ。この試験の階級もそうだが、
試験内容で学習した記憶がある。でも詳しく覚えていない、パス。
問4は、FTAについての出題。FTAって何だっけ?パス。
問5はセキュリティについて。これは簡単そうだな。
簡単そうついでに、一気に3点問題もやってしまおう。

そして先ほどとばした点は、後からじっくりやったが
熟考すれば、何となく答えが見える問題も多い。特に法規はその傾向が強い。
ただ例によって、前述した正誤式の固まり問題については、
3つの文章のうち1つでもわからないと正解がわからないので
付け焼き刃的勉強法を取った私にとってはかなりネックになった。
おそらく1問の差に泣くか笑うかの勝負になるだろう、私はそう確信した。

この試験によく出る問題に、信頼度の計算がある。
今回出題されたのは、MTBF(装置が連続稼働している時間)から
故障率と信頼度を求めるという問題だった。
信頼度について正確な値を求めるならば、対数関数を操る必要があるが、
近似値というか大まかな値を求めるだけで良いなら、比の計算、
すなわち四則演算ができれば十分に答えを導き出せる。
そして解答群の数値はそこまで隣接していないため、
大まかな値が出せれば正解にたどり着ける。
昔の試験では、計算過程も示して解答しなければならなかった。
他にも、記述式から選択式へと変更された試験は数多く存在するが
もしかして資格試験の世界でも、学力低下が進んでいるのだろうか?
(実際は採点作業の省力化だろうけど)

解答を終え、試験会場から退出した時は、試験開始から2時間15分が経過していた。
受験者控室へと移動する。


控え室では、先に退出した人たちが、一心不乱(?)に問題演習に取り組んでいる。
電話帳のような問題集を持ち込んでいる人もいる。
この試験の問題集は、それしかないからな。

私は最新の過去問を印刷した物を持ってきた。A4用紙200枚程度だ。
勘の良い人はわかるだろうが、この印刷物は、2日前に大学のPCを利用して刷った物だ。
法規の勉強を以降に開始したのが昨日だというのはこのためで、
試験勉強時間が短くなるリスクより、
手元にある古い問題集で、誤った法規を覚えてしまうリスクの方を回避したかったからだ。

この試験はまだ終わりじゃない、まだ午後がある。
試験時間の間の休憩時間は、意外と使い道のある時間である。
この時間の使い方は人によって分かれるが、
センター試験や、比較的簡単な資格試験などでは、
既に終わってしまった科目の問題について、あーだこーだ話し合う姿が良く見受けられる。
特に高校生や大学生で、学校単位や仲良しグループで受けに来ている輩に多い。
だが今回控え室で、既に終わった法規や設備の試験問題について、
話しあったり、正解を調べたりしている人は誰一人いなかった。
みんな次に行われる、それぞれの専門科目の勉強に集中している。
私もこの1時間30分の間、必死に専門科目の勉強を行うことにしよう。
綱渡り状態の私にとっては、1問が合否を分ける可能性が高い。


14時、午後の試験が始まる。控え室を出て、再び戦場へ。
この写真の左側から伝送、無線、交換、データ通信、通信電力、通信線路の席順。

午後の試験は『専門的能力』と『電気通信システム』だが、私は『専門的能力』のみを受験する。
『電気通信システム』は、3種以外の工事担任者免状があれば免除をかけることができる。
といっても、おそらくこの受験会場に来ている人の大半が、
電気通信システムの免除を受けているだろうが。

私は5つの専門的能力のうち、『通信電力』を選択している。
『データ通信』とさんざん迷ったが、その選択が正しかったかわかるのはこの試験終了後。

14時20分、試験開始。
午前と同様、空欄補充式から勝負していこう。
問1は交流電源装置、まぁこれは安全牌だろう。
問2は整流回路、選択肢は殆どが数字だ。
昨年の社会保険労務士試験選択式の健康保険法を彷彿とさせる。
(ア)はかろうじて覚えていたが、それ以外は無理だな、解けない。
問3はシール鉛蓄電池、OKOK、これは得点できる。
問4はガスタービン、これもOK、なかなか良いんじゃないの?
問5は電源の配線について、過去問で一度やった範囲だ、大丈夫。
さてと、続いて3点問題に取りかからないと・・・・・・。
・・・・・・えーとインバータの同期が・・・・・・えーと商用電源・・・・・・。
・・・・・・。プッシュプルコンバータ?スイッチングレギュレータ?
・・・・・・。ZZZ・・・・・・。

・・・・・・ああ、寝ていたか。先ほどから3分くらい経ってしまったな。
えーとどこまで行ったっけ?スイッチング素子・・・・・・。
・・・・・・。ZZZ・・・・・・。

・・・・・・ああ、また寝てしまった。(ry

(この間、これを何度も繰り返す)

・・・・・・さっきから眠くてしょうがない。このままだとまずい。何とか覚醒させなければ。
ということでシャープペンを手にとって、左手を付き刺す。
寝たければ、試験が終了してから寝ろ、自分。
気を取り直して何とか解答を続ける。しかし思考力が明らかに落ちている。

今回、UPSの配線に適切なケーブルの太さを
電流や電圧降下から計算するという問題が出た。
計算自体は、導体の抵抗率×線条の長さ/ケーブル断面積で抵抗を求め
後はそこから電圧降下を求めてやれば良い問題なんだが、
私は肝心なことをど忘れしていた。

三相交流の電圧降下の計算式ってどうだっけ?

我ながら、これでエネルギー管理士(電気)の試験に合格したとは思えないな。
たしか(√3)IRだったような・・・・・・。でも自信がない。
そもそも入力電流の値に、どこの数値を使えばいいのか判断できない。
悲惨・・・・・・。

試験終了10分前、何とか解答終了。
自宅に戻って2ちゃんねるに書き込んだ後、睡眠を取る。


正式な解答が発表されるのは水曜日になるらしいが、
本日23時頃には、受験者が各自の解答を持ち寄って作られた解答の試案が提示されていた。
私も、そのデータを自分になりにまとめて、私の解答と比較してみた。

結果

法規 78点程度
設備 62点程度
電力 48点程度

法規は科目合格当確、電力は不合格確定、
設備はどっちに転がることもあり得るといったところか。

法規が勉強1日で合格できるほどの得点が取れたのは、運もあるだろうが
それ以前にいろいろな資格試験を受験して、様々な法律に触れてきたからだろう。
問題文を読んだ際、誤っているものは何となく不自然さを感じ取ることができた。
文章的には不自然にならない、数字の置き換えには対応できないが
今回はそれがあまり無かったのが幸いだったかもしれない。

心残りは、通信電力の解答が、今見直したら明らかに間違いである物につけられている事と
18700円という大金が吹っ飛んでいくことが確定したことか。
やっぱり直前一気はだめだ、睡眠時間が足りないのはだめだ・・・・・・。
もっと前からじっくり力をつけていくべきだった。

実は、設備及び設備管理、専門的科目の両科目の本格的な勉強を開始したのが、
試験が行われる1週間前、即ち4日月曜日になってからのこと。
1週間前の段階で、全く消化されていない問題集を見て、今回は捨てようかとも思った。
でも、捨てなかった。試験会場へ行って全くわからない問題を
ヤマ勘のみで解答するのはとっても屈辱的だし、
かといって試験会場に行かずに敵前逃亡するのは、とてつもない虚無感を味わうから。
私は通関士試験の時と、北海道大学の入学試験の時に体験したが、殆ど茫然自失という感じだった。
(それ以外の×印は、いちおう試験会場には行っている)
となれば、1週間だけでも本気を出して勉強して、砕け散った方が後につながるだろう、
(実際は、この1週間も、1日数時間ずつしかやっていないから、本気とは言えないな)
そう考えた結果、とりあえず法規を攻略することはできたみたい。
最後まで諦めない事の大切さを改めて知った。

こう書いていて、恋愛でも一緒かなと思った。
だとすると、高校時代に私が取った行動は最悪か・・・・・・。
もっと早く資格試験を受け始めていればなぁ・・・・・・。(論点が違うか)
そういや資格試験は後からでも逃げていくことはないが、
(たまに廃止されるけど、殆どが発展的解消なので実用上は問題ない)
恋愛は機を逸したら逃げていく。
ひょんな事から、同世代の皆さんが恋愛に必死になる気持ちが少しだけわかった。