2005/5/31 皐月三十一日 May Thirty-First



今日は藻岩山の日。
何故かと言うと、藻岩山の高さは531mだかららしい。
531mと5月31日と引っ掛けたようだ。
といってもこの藻岩山の日、恐ろしく歴史が浅い。
なにしろ、今日が藻岩山の日になったのは今年からだ。

この藻岩山の日、名前だけではなく、ちょっとしたサービスがある。
今日に限って、藻岩山の山麓と山頂を結ぶロープウェイが無料で開放されるのだ。
普段は往復で1100円かかるので、これはおいしい。

ということで、朝から藻岩山に入り浸ろうと思ったが、
火曜日は1番授業がたくさんある日、それは無理なようだ。

本日の公法入門、平等とは何か というタイトル。
VTRを見て、その内容を要約しなさいというもの。
VTRの内容は、ある街では、黒人と白人を強制的に同じ学校に通うような措置を取り、
ある街では、消防士採用試験で、合格者の半分を白人男性以外から選ぶ措置を取ったというお話。
私がそのVTRから最も感じたテーマは、“機会の平等と結果の平等の違い”だ。

よく差別の対象として槍玉にあげられるものは、人種や性別、社会的身分などいろいろあるが、
複数絡むと私の処理能力が追いつかなくなるので、ここでは性別による物のみを例として利用する。

「受験資格には、学歴・年齢・性別・実務経験などの制限はありません」
よく資格試験では、こういうくだりを見ることがある。
誰でも受験できますよ、ということだ。
ある点数以上を取れば合格、その点数に届かなければ不合格、
そして“ある点数”は、正当な理由無く人によって変動する物ではない。
ここで言う正当な理由とは、科目合格による緩和、実務経験による免除などであり
条件さえ満たしていれば何人でも発動することができる。
これは機会の平等である。

それに対して、もしこんな規定があったらどうだろう?
「合格者は男性と女性が同数になるようにします」
当然、合格者は男性と女性が半々になる。これが結果の平等で、
一見、平等であり、差別がないように見える。

が、こんな規定が、実際の試験にあったらどうだろう?

危険物取扱者、電気工事士、公害防止管理者、高圧ガス製造保安責任者、
こういった理科系、工業系の試験は、受験者の殆どが男性だ。

特に高圧ガス製造保安責任者試験なんて、
私が見たところ受験者の9割以上が男性だった。
ということは、この条項を適用してしまえば、
たとえどんなに成績の悪い女性でも合格させる、ということにしても
合格率を20%弱以上にすることはできない。
逆のパターンもありうる。
看護師、保健師、助産師、管理栄養士、これらは女性受験者が大多数を占める。

何を馬鹿なことを言っているんだ、試験の実態に合わせて比率を替えればいいじゃないか、
そう思った方もいるかもしれない。
しかし、実はそう言った垣根を設けること自体が差別なのよね。
出会い系とか結婚斡旋組織じゃないんだから、
たいていの場合において、必ずしも両性が必要であるわけではない。

ちなみに、人種や性別などによるものではないが、
資格試験でこのようなアファーマティブアクションが採用されていた例がある。
少し前までの『司法試験二次論文式試験』だ。
ここでは何をもって区分したかというと、“初回受験から3年以内であるか否か”だ。
まず、合格者のうちの7分の5を、受験回数にかかわらず成績上位者から順番に選ぶ。
そして残りの7分の2を、“初回受験から3年以内”の人の中で成績上位の人から選ぶ。

何故こんなことをするのかというと、

(以下法務省のWebページより引用)

 この制度は,合格率が非常に低く,合格までに平均6,7年もの
 長期間の受験勉強を余儀なくされるという近時の司法試験の異常な状況を緊急に改善するため,
 平成3年4月の司法試験法の改正により導入されたものです。
 すべての受験者について,初回受験から3年間は合格枠に入る可能性を平等に保障して
 少数回受験でも合格できる可能性を拡大することにより,受験競争を少しでも緩和し,
 法律学以外の分野でも幅広い教養を身につけた学生や,
 多様な経験を積んだ社会人が積極的にチャレンジし,
 実際にも比較的短期間の勉強で合格できる魅力ある試験にすることを目的として設けられたものです。

(引用終わり)

ということらしいが、他に改善方法は無かったのだろうか?
そして長期間勉強している人の立場はどうなるの?
ちなみにこの制度は時の流れと共に、7分の2から9分の2、
そして11分の2へと縮小され、今では既に廃止されている。

法律学以外の分野で幅広い教養を身につけた学生や、
多様な経験を積んだ社会人をチャレンジさせたいなら、
大学入試にセンター、一般入試、推薦、帰国子女枠などがあるように
法律以外の幅広い分野が出題される司法試験や、
今までの多様な社会経験によって得点できる司法試験を作ればいいと思う。
弁理士試験なんかは、専門科目がいくつもあってその中から選べるよね。

私の大嫌いな女性専用車も、後者の結果の平等だろう。
これについて書き始めると長くなるので、今回はやめておく。


さて、藻岩山に直行するか、と思ったが、今日は社会保険労務士試験の締め切り日だ。
なのに未だ書類を用意していない。ちょっと揃えてこよう。そして、少し休憩。
時間があると、ロープウェイが無料なのを良いことに何往復もしそうだからな。
ちょうど行って、最後の便ですばやく帰ってくるくらいがちょうど良い。

最寄りの市電停留所まで行くと、すぐさま市電がやってきた。
しかし行き先表示を見ると、『中央図書館前』となっている。
この後車庫に入る車両のようだ。そこで並んでいたおばさんが、
「ねぇ〜、こんな中途半端なの来ても困るわよねぇ〜」
と話しかけてきたいので、相づちを打っておいたら、
「邪魔だから早く行きなさい、シッシッ」
と、市電に言っていた。この列車が早く行っても、次の列車が早く来るわけではないのだがね。

藻岩山に行くなら、ロープウェイ入口の電停で降りるのが普通だが、
私は一つ先の西線16条で下車する。
山鼻郵便局に寄るためだが、この郵便局は電停から歩いて1分程度で
夜も営業している大きな郵便局なので、けっこう使い勝手がよい。
このほかの24時間営業局では、東郵便局が元町駅から歩いてすぐだったり、
厚別郵便局が、新札幌駅から歩いてすぐだったりで使いやすい。
真駒内駅から歩いて数分の南郵便局も便利な部類かな。

豊平郵便局は、バスなら良いけど地下鉄では使いにくい。
北郵便局は、もう利用したくないほど不便な場所だった。
西郵便局は、高速バスのバス停からは近く、
白石郵便局は駅から遠くて不便でバスも中途半端、
手稲郵便局は、手稲から歩いては行きたくない距離。
いつの間にかあちこちの郵便局を使っているのはなぜだろう?

藻岩山麓通を駆け上がり、心臓が苦しくなったあたりでロープウェイ山麓駅が見えてきた。
前の方から自転車に乗った子供がすごい勢いで降りてくる。
何をやっているんだろう?その後ろから両親らしき人が走って追いかけながら
「おい手を使ってブレーキをかけろ!!」
「キャァァァァァァ、止まって!止まって」
などと、かなり逼迫した声が。子供自身も足を地面に引き摺りながら
「うわぁぁぁぁ、止まらない、止まらない」
と叫んでいる。ブレーキのかけ方がわからないのか、はたまた壊れているのか。
このまま下まで駆け下りたら、そこは藻岩山麓通との交差点、
最悪、車と出会い頭の正面衝突だ、そうでなくともガードレールに激突だろう。どうにかしなければ。
しかし自転車が暴走している側は道路を挟んで向かい側、
このタイミングで私が駆け寄ろうとすれば、私自身が車道を走る車に轢かれる、
かといって車を待ってからではおそらく自転車の方が先に走り抜ける。
ということで、ここで私が助けることはできないと判断し、坂を駆け下りることにする。
幸いにも、向こう側にも歩いていた人がいて、その人がうまく自転車の暴走を止めた。
止まった瞬間、子供は安心したのか泣きじゃくる。
もし、向こう側に誰もいなかったら、この子供はどうなったのだろう?
そう思うと背筋が凍り付いた。

まぁともかく、事故を起こさなくて済んだようなので、
予定通りロープウェイに乗ることにする。
今日は無料とはいえ、乗り場ではきちんとチケットを渡しているようだ。
乗車人数を把握するためだろうか?


しばらく待っていると、山頂から帰ってきた人が降りてきた。
ロープウェイの到着である。さて、いよいよ乗車だ。
無料とあってか、いっぱい人が来ているようだ。
しかし、私のように一人で来ている人は見あたらず、
圧倒的にカップルと親子連れが多い。

ロープウェイに乗ると、たちまち地上の光が遠くなる。
「うわっはええ」
「はやーい」
「わー」
「すごーい」
「きれー」
乗っている人たちから、歓声が上がった。


しかし私の位置からでは、人しか見えません・・・・・・。
この機会に初めて藻岩山に登る人、結構いるみたいね。
となれば、私の立場上、良い眺めは他の人に譲るべきだね。
5分ほどの空中散歩はあっという間に終了する。


ロープウェイを降りると、一番最後に降りたからだろうか?そこには大行列ができていた。
前に藻岩山に登ったときは、ここからリフトに乗って山頂を目指せたのだが、
どうやら今年から、リフトは停止されたみたい。
その代わり無料のシャトルバスが、頂上への移動手段として用いられているようだ。
常にリフトを動かしているのは、エネルギーの無駄だと考えたんだろうな。
しかし、今日のような繁忙期は、バスの輸送力ではちょっと苦しいらしく
そのため、ロープウェイの降り口に長い行列ができている。
しかも、用意されたバスの台数の関係で、今からバスに乗ろうとすれば、
一度頂上に行ったバスが戻ってくるのを待たなければ乗れないらしい。

こんなところで無駄に待っていたくない、なんか良い方法は・・・・・・。
ん?窓の鍵が開いているね。そして窓の高さはそんなに高くないし、十分な開口部を確保できるね。
よっこいしょ、っと。見事行列を避けて建物から脱出成功!
「人の目なんか気にしない」と言うのなら、せめてこれくらいはやってくれ。

無料シャトルバスが出ているとはいえ、バスを使わなくても頂上には行ける。
リフトの跡地と平行する道路を歩く、またはいっそのことリフト跡地の急斜面を登っても良い。
ということで、リフトの下を歩くことにしたわけだが、
歩き始めて数分でバテた。先ほど藻岩山麓通を駆け上がったとき、
心臓がかなり苦しかったが、その症状がここでまた再発した。
素直にバスに乗っておけば良かったよ。とりあえず走るのは止めだ、歩こう。

しかしこの道、降りてくる人はいっぱいいるけど、登ってくる人はぜんぜんいないや。
というか、今回ロープウェイを降りた人の中で私だけだね、登る人。
でも、上から来る人と挨拶したり、老夫婦に下まで行けるかを尋ねられて
「はい、行けますよ。でも途中、暗くて足場が悪いところがあるので注意してくださいね」
なんて答えながら歩いていけるのは、バス利用者にはない利点だ。

そしてなんとか頂上へ。2巡目のシャトルバスより早く着いたぞ。
結構人が来ているなぁ、やっぱりカップルが多いけど。

函館の時もそうだが、ここにも夜景に対してフラッシュを焚く人がいっぱい。
フラッシュはあくまでも、跳ね返った光を利用する物だから、
何キロも先にある夜景に対して使っても、意味がないんだけどなぁ・・・・・・。
「フラッシュ使ったのにどうして明るくならないの?」
と言っている女子が高校時代のクラスメイトにいたけど、きちんと原理を勉強してください。

さてと、せっかく来たんだ。私も夜景の撮影に挑戦しよう。
でも、例のごとく三脚は持ってきていないので、カメラを固定できる場所を探さなければ。
でも良い場所がないな。とりあえず何枚か撮影してみたけど、おそらくブレているな。
仕方ない、場所を変えるか・・・・・・殺気。後ろから誰かが私に近づいている。
おそるおそる振り返ってみると・・・・・・
「すいません、写真撮ってくれませんか?」
そこには女子高生の二人組が立っていた。
勿論承諾し、彼女らから使い捨てカメラを預かる。
「たぶんこのカメラだと、夜景は綺麗に写らないと思うけど・・・・・・それでもいい?」
なんて調子に乗って言ってみる。そもそも三脚が無いことには
どんなカメラを利用しても難しいと思うけどね。
ということで撮影した後カメラを女子高生に返して終了。
フラッシュを使って取ったから、たぶん背景は真っ暗だと思うけど
でも、カップルや家族連れに該当しない人も来ていると知って少し安心した。
一人で来ている人は、未だに見あたらないけどな。まあ気にしない。

その後、若いカップルや30代後半位の夫婦などにも写真撮影を頼まれた。
持っているカメラは、だいたいがコンパクトなデジタルカメラ。
これでもやっぱり、夜景と人物を同時に綺麗に写すのは難しいかも。
せっかくやってきたわけだから、両方とも綺麗に撮れた写真を持って帰ってほしいものだ。

と言うことで、ちょっと考えてみることにした。
スローシンクロ機能を使うのがセオリーだろうが、
これでもカメラを固定しなければならないのには変わりない。
被写体にも何秒かの間、固まってもらわなければならない。
1600などの高感度フィルムを使ったらどうだろうか?
これはやったことが無いからわからないな。
そもそもカラーフィルムをここ十年ほど触っていないし。
デジタルカメラなら、まず人物だけをフラッシュ撮影して
その後、人物を取った位置からカメラを動かさずに長時間露光で夜景を取って
後から2枚の写真を合成するとか・・・・・・。なんか良い方法あるのかな?


とりあえず私の撮影した夜景写真。フラッシュは使っていない。

程なくして、ロープウェイ最終便出発の案内が流れる。
しかしシャトルバスを待つ行列は長く、なかなか消化されそうにない。
列がある程度消化されるまでは、うろついていても大丈夫そうだ。

バスを待つ人が残り1桁になったあたりで、私も行列に並んだ。
おいおい後ろの人よ、私のデジカメの液晶ファインダーを覗き込んだって面白くないぞ。
私が撮影するような物は、普通の人とだいぶ異なるんだから。
と思ったらその人も、私同様に何でも撮影しまくる人で、
行列を撮影したり、バスを撮影したりしている。
私と違って、彼女同伴だけどな。その差は大きいな・・・・・・。
でも、無差別撮影という行動をすることは、
彼女ができる事の妨げにはならないと言うことがわかり、少し安心した。


最後のシャトルバスに乗り込み、ロープウェイ乗り場を目指す。またここでも行列だ。
本来なら最終ロープウェイはとっくに出発している時間なのに、
今日は人が多すぎて、所定の便だけでは裁ききれなかったため、
営業時間終了後もピストン輸送を実施しているようだ。
しばらく待つと、やっと行列が捌けていきやっと順番が回ってきたかのように見えた。


「あ、ここまでで定員です。次をご利用ください」
私の前で乗車が打ち切られた。残るのは私と2組のカップル、そしてスタッフのみ。
そのカップルうち1組は、先ほどのなんでも撮影していた人で
やっぱりここでも何かをいろいろ撮っていた。


21時55分、所定時間より25分遅れの最終便、
乗っているのは私を含めて5人の乗客と、同じくらいの数のスタッフ。
当然、眼下に広がる夜景を存分に楽しむことができ、
ぎゅうぎゅう詰めの前の便に乗せられるより良かったかもしれない。

山麓駅に着くと、親が車で迎えに来ていた。そして開口一番、
「何だ、おまえは一人で藻岩山に登っていたのか。誰かと一緒だと思ったよ」
誰かって誰だよ・・・・・・。『誰か』さんなんて知らないよ、ボク。
(そもそも誰かと一緒だったら、お迎えなんて頼まないよ、たぶん)

札幌にお住みの皆様も、それ以外にお住みの皆様も、
機会があったら是非藻岩山に登ってみませんか?
ロープウェイで登る以外にも、観光道路(有料ですが)を通って登る方法や
登山道をひたすら歩いてくるという方法もあります。
でもやっぱり、ロープウェイの利用が良いと思いますよ。

ただし、ロープウェイ山麓駅はバリアフリーに対応していないので
車いす利用の方などがロープウェイに御乗車される場合は、
山頂駅から乗車して、山麓駅でそのまま折り返すことになります。
その場合、観光道路で山頂まで移動するのですが、
その場合、道路の利用料金はかからない様です。(もちろんロープウェイ代はかかります)

なんてダラダラ書いているのも何なので、リンクを出しておきますか。
藻岩山ロープウェイ(ロープウェイだけじゃないけど)
皆様、藻岩山へぜひお越しください。