2005/11/10 霜月十日 November Tenth






タリウム事件の女子高生ネタがまだどうも続いているようで、
自宅に薬品が30種類あっただの、そう言う話になっている。

さてと、今日は特筆すべき事もないし、(せいぜい一里が3mだと思っていた馬鹿がいたくらいか)
私の薬品歴(?)と、自宅で保管している薬品でも紹介してみることにする。


まず私と薬品との関わりは小学校時代、自由研究で硫酸を使おうと考え薬局に行ったことから始まった。
「硫酸ください」
「え?硫酸!?何に使うの?」
「自由研究で使います」
「うーん・・・・・・硫酸は最低でも500ミリリットル以上だし、
 そもそも危険な物だから小学生に売れるものじゃないの」
このときは、ふーんそうなんだ、と思ってそれ以上考えはしなかった。


中学校時代、学校から物を失敬するのが流行っており
チョークだの電池だのの小物が無くなることはしょっちゅうで
場合によっては教室備え付けのビデオデッキをいただいたり、
教師のデジタルカメラをいただいたり、放送室の備品をいただいたりしている輩もいた。
理科室からも、ルーペや顕微鏡の接眼レンズをいただいていく人がいた。

そんな中、私も理科室からいただいたものがある。
よりによって、塩酸、水酸化ナトリウム水溶液、硫黄粉末、鉄粉末。
理科の時間にあらかじめ容器を持ち込み、それに中身を移し替える。
そしてしばらくして教師にばれ、呼び出された。
金額にしてみれば、おそらく50円相当にも満たないだろうが
薬品の管理責任上、ビデオデッキと違って放置するわけにもいかなかったのだろう。
今思えば、なんであんな物を失敬したのか理解に苦しむが、
当時、薬品に対して非常に強い憧れを持っていた故の犯行だったと自己分析してみる。

さらに同じく中学校の時、理科教師が授業中に
「毒ガスの名前を言えるだけ列挙しろ」という変な課題を与えてきたことがある。
さて、授業がどうなったかは想像できるだろう。
他の人が「塩素」とか「サリン」とか、良くある物を答えた後は
授業時間終了まで延々と私のワンマンショーとなった。


高校時代、私が理科系に進むと信じて疑わなかった時代。
学校で理科の実験をしないことに不満を持った私は、自力で薬品を集め始めた。
高校に行く前に、薬局に頼んでいた硫酸と硝酸を受け取り、そのまま登校したこともあった。
ここで誰かに盗まれていたら、非常に面倒くさいことになっていたな。
だけど、硫酸の脱水反応を一度も実験せずに、テストで問題を解いたりすることが
非常に理不尽だと考えていた。それは今も同じである。


そして今、たまに日曜大工ならぬ日曜ケミストをやっている。
何か試してみたいな、と思ったら試薬の瓶を保管している箱を開けて
試験管やビーカーなどを持ち出して活動に勤しむ。
当然、自宅には実験室はないので、実験場所は台所だったり、屋外だったりする。
たまに付近住民が、驚いて問い合わせにくることがある。
一番大変なのが後片付け。危険な廃液を出すわけにいかないので
徹底的に無害な物質に変換してから処分する。
たとえば酸なら、過剰の炭酸水素ナトリウムで中和したり、
有機物質ならバーナーを使って完全燃焼させたり。

でも、こんなせこい事をやっていないで、いつかちゃんとした実験室で活動したいと考えている。
もっとも、今の生活の先にはそう言う人生は無いけど。


さて、次は私の手持ちの試薬でも紹介してみる。あまり種類はない。
試薬だけなら買おうと思えばいっぱい買えるけど、資金の無駄だし
ベースとなる物質があれば、反応させて作ればいいと考えているからだ。
写真を掲載しようかとも考えたが、わざわざそのためだけに箱から
試薬を取り出してくるのも面倒だし、酸化剤と有機物質、酸と塩基などのように
わざわざ隔離して保管している物を近づける意味もないかな、と思ったので。


酸化剤(物質を酸化する能力に富む、裏を返せば還元されやすい物質)

ここは資格のページなので、資格絡みのことを付け加えると
・これらは全て1類の危険物である。(危険物取扱者)
・これらは全て酸素バランスがプラスであり、酸化剤として働く。(火薬類取扱保安責任者)

・硝酸カリウム(KNO3)
  硝酸とカリウムの塩であり、白色粉末。昔から火薬の原料としてよく使われた酸化剤。
  木炭、硫黄と一定の割合で混ぜると、黒色火薬ができる。
  酸化剤としては使いやすいので頻用している。 
  水溶液にする際、温度が上がると解けやすくなる度合いが素直なため
  高校化学では、溶解度の実験で良く名前が出てくる。

・塩素酸カリウム(KClO3) 劇物
  塩素酸とカリウムの塩であり、白色粉末。こちらも火薬の原料としてよく使われる。
  上記の硝酸カリウムより過激で、特に強酸や可燃物などが混入したときの反応性は恐ろしい。 
  使い方を誤ると500gの試薬瓶ひとつで家1つ燃やしてしまう恐れも。
  昔は花火にも使われていたが、危険なので今は過塩素酸カリウムに取って代わられている。
  同じく昔は酸素を得るために使われていたが、危険なので今は別の方法が用いられている。
  上記のように危険なのと、ちょっと高価なので、買った物のあまり使っていない。 

・過マンガン酸カリウム(KMnO4) 麻薬&向精神薬の原料物質
  深い紫色の粉末で、強力な酸化剤。
  塩酸をも酸化し、塩素ガスを発生させるので注意が必要。
  有機物質のメチル基をカルボキシル基へと酸化させるために使われる。
  水に溶けると鮮やかな紫色となるため、酸化還元反応適定用の試薬として、
  さらにそれの応用として水の汚れの度合いを調べるためにも利用される。



カルボン酸(カルボキシル基COOHを持つ炭化水素の総称、炭酸より強いが塩酸よりは弱い)

・蟻酸(HCOOH) 劇物
  水素に対してカルボキシル基がついた、もっとも単純なカルボン酸。
  その構造上、カルボン酸でありながらカルボニル基を持つため、
  還元性があり高校化学では頻出の物質である。還元されると水と二酸化炭素になる。
  人間が摂取するとアシドーシス状態(体内の血液が酸性側に偏った状態)となり、失明、死亡する。
  構造が単純なので、各種の有機物質の合成に用いる。

・酢酸(CH3COOH)
  食用の酢の主成分で強い酸味がある。高濃度な物は皮膚につけないようにした方が良い。
  純度が高い物は冬に凍るため、氷酢酸と呼ばれる。
  2つの酢酸分子から水分子を除いた無水酢酸は、有機合成によく利用される。
  写真現像の際の停止液としても用いられるので、
  その手のカメラ店などに行けば簡単に購入できる。停止液用のものは飲用はしない方が良い。

・クエン酸(C6H8O7)
  示性式HOOC−CH2−COH(COOH)-CH2-COOHを見ればわかるが
  分子内に3つのカルボキシル基を持つ3価のカルボン酸。
  健康食品としても有名なため、知名度はかなり高い。
  生体内のエネルギーの源であるATP(アデノシン3リン酸)を生み出す
  TCA回路(高校生物ではクエン酸回路)と非常に深い関わりを持つ。
  今のところ、毒性は無いと報告されているのでどんどん摂取したいところだが
  結晶をなめると酸っぱいを通り越した凄い味に涙が出る。良薬口に苦しか。


アルコール(ヒドロキシル基OHを持つ鎖状炭化水素の総称、芳香族の場合はフェノール類となる)

・メチルアルコール(CH3OH) 劇物
  工業用アルコールとも呼ばれる、メチル基にヒドロキシル基がついたもっとも単純なアルコール。
  燃料や有機溶媒として使われるのが主な用途。人が摂取すると
  →ホルムアルデヒド→蟻酸 と体内で酸化し、蟻酸の項で書いたように失明・死亡するおそれがある。
  戦後の混乱期には、これを用いた酒類を飲んで失明者が続出した。
  また 次世代のエネルギー源、燃料電池に必要な、
  水素を取り出すための材料としても利用されている。
  なお、“内燃機関用メタノールに関わる毒物劇物取扱者”という、
  受験者が非常に少ない資格がある。私も受けてみたいと思うのだが・・・・・・。
  ちなみに価格はかなり安いし、薬局によっては常備している。

・エチルアルコール(C2H5OH)
  言わずと知れた、酒類に使われるアルコール。ただ単にアルコールと言えば、これのことを指す。
  水と大変相性が良く、任意の割合で溶け合う。消毒用にも用いられる。
  無水アルコールとして販売されているものの純度はだいたい99.6%、
  一度飲んでみたことがあるが、二度と飲みたいとは思わない。
  当然、薬局に行けば簡単に買える。500mlで1400円くらいかな?

・グリセリン(C3H8O3)
  代表的な三価のアルコールで、ちょっとドロッとしており、舐めると甘い味がする。
  そもそもグリセリンの名前の由来が、“甘い”という意味のギリシャ語から来ている。
  浣腸用として優秀な薬品であり、薬局で普通に購入できる。
  また、硝酸エステルとすると、爆薬及び狭心症の治療薬として有名なニトログリセリンとなる。
  ニトログリセリンは、酸化剤ではないのに酸素バランスがプラスである。
  また、これと脂肪酸の化合物を油脂という。


無機酸(電離して水素イオンを発生する無機物質。電離度によって弱酸と強酸に分かれる)

・硼酸(H3BO3)
  白色の固体で、水溶液は弱い酸性。医療用としては目の洗浄用に使われるため、薬局で普通に買えるが、
  硼酸団子として、ゴキブリの殺傷用に使われることなどからもわかるように毒性があり
  多量に摂取すると命の危険がある。
  小学校理科でこの物質名が出てくるが、それ以降中学高校と、あまり出てこない物質である。

・硫酸(H2SO4) 劇物
  古の昔から存在が知られている酸の代表選手。
  少しドロッとしており、希硫酸は主に強酸、濃硫酸は主に強酸化剤として働く。
  水を激しく奪う性質があり、有機化合物の分子内から水を奪う脱水作用を持つ。
  不揮発性であり、放置しておくとどんどん濃縮されていくので危険である。
  工業的に欠かせない物質のため大量生産されており、意外に安く入手できる。
  わざわざバッテリー液から入手するより、薬局に行った方が早い。

・塩酸(HCl) 劇物
  塩化水素の水溶液で、小学校以来お世話になる強酸。刺激臭がある。
  水素よりもイオンになりやすい金属と反応し、水素を発生する。
  水酸化ナトリウムを製造する際の副産物である水素と塩素を合成して製造する。
  また数々の有機物質を、塩酸塩として安定させるためにも使われる。
  高校時代、誤ってこれと次亜塩素酸塩を混ぜてしまったため、
  校内に塩素ガスが漏洩したことがあった。(いわゆる2種類の洗剤を混ぜたのと一緒)
  今の時代だったら、確実に新聞ネタだろうな。
  便所掃除用などと言って薬局に行けば、たしか500ml瓶1つで600円くらいで買える。
  在庫があり、取り寄せの必要がない薬局も多い。安いのでどんどん使っていこう。(何に?)

・硝酸(HNO3) 劇物
  強力な酸化力を持つ強酸であり、銅や銀などといった水素よりイオンになりにくい金属をも溶かす。
  たとえば10円玉に滴下すると、10円玉が緑色になって溶ける。
  塩酸との混合物は、金や白金をも溶かすほど強力である。
  また、ニトロ化合物の合成など工業材料としても良く使われる。
  そう言えば、K氏がこれを勝手に持ち出し、家のそばに止まっていた車に垂らしたため
  その車の塗装がはがれたという事もあったっけか。
  薬品は正しく使いましょうね。(お前が言うな!)



何か試薬の紹介になってしまったな。
しかも、これを入力するのに大分時間を食っている。無駄だな。
だいたいここが折り返し地点だが、ちょっとここからは簡略化する。



塩基(酸と対を無し、水溶液にすると水酸化物イオンを生じる物質。蛋白質を溶かす)

・水酸化ナトリウム(NaOH) 劇物
  こちらは塩基の代表選手。苛性ソーダとも言う。
  塩化ナトリウム水溶液を電気分解して作られ、工業原料として大量に利用される。
  潮解性があり、空気中の水分を吸って液状化する。
  多くの薬局に常備してあり、結構買いやすい。500gで700円くらい。

・水酸化カリウム (KOH) 劇物
  こちらはカリウムの水酸化物。化学的性質は水酸化ナトリウムと殆ど同じ。
  海に囲まれた我が国では、海水由来のナトリウムの確保は容易だが
  カリウムの供給は困難で、輸入原料が殆どのため、必然的に価格が高くなる。
  よって工業的には、ナトリウムで代替できる物はナトリウムを使っている。
  ただ、こちらのほうが水酸化ナトリウムより塩基性が強いので
  電池など、強い塩基が必要なものにはこちらが使われる。
  個人で使うとなると、やはり水酸化ナトリウムの方が供給しやすい(薬局ですぐ買える)ため、
  取り寄せとなるこの物質の出番はあまりない。


塩(酸と塩基を反応させて作った生成物。必ずしも中性を示すとは限らない)

・炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)
  いわゆる重曹であり、ベーキングパウダーとして利用される。
  医薬品としても用いられているので、薬局で普通に販売している。
  私は、二酸化炭素発生用及び酸の中和用として活用している。

・チオ硫酸ナトリウム
  還元剤として働く物質で、写真の定着液にも用いられている。
  酸化力の強いハロゲン(特に塩素)とぶつけて、除去するという使い方もある。
  やはりこれも、その筋のカメラ屋にいけばいくらでも買える。


有機溶媒(有機物質を溶かすための物質の総称。吸入することは余り好ましくない)

・ベンゼン C6H6
  芳香族炭化水素の基本形で、亀の甲に例えられるベンゼン環を持つ。
  ベンゼン環は不飽和な化合物だが、付加反応より置換反応の方が起こりやすい。
  燃やすと黒い炎を上げて燃える。発ガン性が指摘されているのであまり使いたくない。
  余談だが、ベンジンとは別の物質である。

・トルエン C6H5CH3劇物
  構造内にベンゼン環を持つ芳香族炭化水素であり、メチルベンゼンとも呼ばれる。
  有機溶媒として優秀だが、引火性が強いので火気に注意する必要がある。
  シンナーの主成分がこれで吸い過ぎると脳が萎縮する。乱用してはいけない。
  私は油汚れを取るのに使ったことがある。確かに油は驚くほど落ちたが、
  家中の換気をしなければならなくなって、それが非常に面倒だった。

・アセトン CH3COCH3
  もっとも単純なケトン類で、イソプロピルアルコールの酸化で得られる。
  工業的には、亀田のフラッシュで有名はクメンヒドロペルオキシドからの合成が多い。
  有機溶媒でありながら、水とも溶けあう両刀使いで、マニキュアの除光液として利用されている。
  私はできるだけトルエンよりこちらを利用するようにしている。

・ジエチルエーテル C2H5OC2H5
  エチル基を2つ持つエーテルであり、ただ単にエーテルといえばこの物質を指す。
  麻酔作用があり、大量に吸引すると意識を失うが、MPは回復しない。
  上の3つと比べると単価が高いので、私はあまり使用していない。
  ちなみに上の3つを含むこれらの有機溶媒は、第4類の危険物である。


指示薬

・フェノールフタレイン(C20H14O4)
  塩基を検出するための代表的な指示薬で、pH10程度より塩基性の
  水溶液に滴下すると、赤紫色を示す。
  中性以下では無色であり、わかりやすいため中和滴定にも良く用いられる。
  意外と高価で、私が買ったときは50gで2000円だった。
  指示薬の類は、少量で使う物なので基本的に高価である。


金属

・鉄粉(Fe)
  ただの鉄の粉末だが、第2類の危険物に指定されている。
  粉末となり表面積が増えることで、空気との接触面が増え、反応しやすくなっているからだ。
  食事に混ぜたら鉄分を摂取できるのだろうか?貧血に良さそうな気もするけど・・・・・・。


その他

・過酸化水素水(H2O2)
  3%溶液は、オキシドールとして消毒用に市販されているが、私が持っているのは30%溶液である。
  不安定で、光に当たり放置しておくと分解して酸素を発生する。
  二酸化マンガンを入れると反応が促進される。酸素を得るために便利な物質だが
  可燃物との接触は注意する必要がある。第6類の危険物である。

・塩酸エフェドリン(C11H17NO・HCl)
  都合により説明省略。わかる人だけわかってください。


以上

興味がない人が読んでいても全く面白くないですな、これは。
そして全然日記じゃないですな。うん。高校化学の復習にはなるかもしれませんが。
全部読んだ人、お疲れ様でした。
調べた訳じゃないので、記述に間違いがある可能性もあります。ご容赦願います。


さて、私が所持している試薬に共通して言える特徴は、
全て基本的な試薬であり、分子構造も単純な物が多いと言うこと。
酒石酸アンチモンカリウムとか、ややこしい構造の化合物があっても
汎用性が低いから使い物にならん。


さて、実は例の女子高生が、2ちゃんねるに書込をしたのではないかということで話題になっている。
スレッド本体はないが、コピーがアップされている。
毒物マニア大集合

ここの>>369が、このタリウム事件の犯人の書込ではないかというのだ。
さて、当該書込はともかく、気になったのはこの書込。


445 名前:あるケミストさん :2005/11/02(水) 00:32:23 
>>429 
本当に化学を真面目にやってるなら、タリウムなんかまともに調べないよ。 
特に高校から大学にかけては全くタリウムは使わない。 
つまり、ただの毒物マニアで、化学の知識とやらは毒物の知識ばかりかと。 


確かに、そう言われてみればそうだ。
私も、中学校の時に周期表を暗記した際に名前は知ったが、
用途、特性などについて調べたことはない。
世間一般の人からすれば、今回の事件がなければ名前すら知らなかったはず。
そんなマイナーな金属なんて、合金を作るとか、半導体のドーピングに使ってみるとか
そう言う方向ならともかく、化学反応的には面白くないしな・・・・・・。

まあ、毒物劇物を人を殺傷する目的で使った時点でアウトですよ。
どうしても生体実験したければ、近所の烏や鳩あたりで留めて起きなさいってこった。
鳩に餌を与えないでくださいとは書かれていても、鳩に劇物を(ryとは書かれていないしね。
まあ生態実験を始めると、次は人間を、とエスカレートするんだろうけどな。

何かこんな事書いていたら、また何かやりたくなってきた。
近いうちに行きつけの薬局に行って、試薬注文してくるか。